高校野球・夏の甲子園2回戦(12日)
○関東一(東東京)7―1北陸(福井)●
高校野球にも職人がいる。関東一の「足のスペシャリスト」が三回に代走として登場し、仕事をした。
1点を追う三回。無死一塁から先発していた9番・畠中鉄心投手が、三塁手の失策で出塁した。ここで米沢貴光監督が勝負に出た。投球内容が良くないとみた畠中投手に代え、藤田大輔選手を一塁走者に送った。普段より出番は早かったが、ウオーミングアップを入念にやって準備はできていた。
犠打で二、三塁とすると、相手投手の暴投で同点となった。藤田選手は三塁に進んだ。ここで見せ場がきた。2番・成井聡選手が打ち上げた打球は力なく遊撃手の後方へ。結果的に左翼手が捕球したが、体勢が本塁ではなく、二塁方向にあるのを見逃さなかった。「(左翼手の)体勢が悪かった」。迷わずスタートを切り、スライディングで生還。勝ち越した。
東東京大会で藤田選手は3試合に出場して1盗塁で1得点。打席に立ったことはない。昨夏以降、新チームになってから50メートル6秒1の俊足を生かした代走に徹してきた。「一人一人に役目がある」という。
試合後、米沢監督は「藤田の生還でチームが一気に明るくなった。勇気を与えてくれた」とたたえた。藤田選手が日ごろから意識する「ワンプレーで流れをつかむ」という役割をキラッと光る足で果たした。【荻野公一】
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