(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 木更津総合5-8神村学園)

 クール。おとなしい。神村学園の今岡拓夢は周囲からは、そろって同じような印象を持たれている。

 「目立ちたくない。恥ずかしいから」

 練習中に声は出すが、大声というほどではない。全体のランニングでは周りのかけ声に隠れるように、控えめに。教室で手を挙げて発言するなんて、もってのほかだ。

 ただ、バットを持つと嫌でも目立ってしまう。リトルシニアU15日本代表。2年生ながら3番に座り、「打撃センスは天性のもの。スター性がある」と小田大介監督に言わしめる。

 2学年上の兄・歩夢さんは昨夏、全国4強入りしたチームを、主将として強烈なリーダーシップで引っ張った。「兄はすごいガッツポーズをして目立つ。自分はそういうのは好きじゃないタイプ」。弟は我が道をゆく。

 1年生で出場した昨夏に続く甲子園。だが、投手とのタイミングが合わない。3打席目まで2三振を含む無安打。七回に4―4に追いつき、なお1死二塁で回ってきた第4打席、投手が代わった直後の初球に「気持ちで食らいついた」。

 打球が左中間を深々と破る。頭から三塁へ滑り込み、起き上がるとベンチで大盛り上がりの仲間たちが目に入った。

 「本当にうれしかった。みんな、ずっと声をかけてくれた。みんなが打たせてくれた」。たまらず、人生最大のガッツポーズが出た。(室田賢)

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