世界に対策されようとも
3歳でレスリングを始めてから、高校までは父の優史さんのもとで基礎を身につけた櫻井選手。大学からは親元を離れ、柳川美麿監督のもと、世界で活躍する選手に成長してきました。
柳川監督のもとで特に磨きがかかったのが「腕取り」と呼ばれる技術です。
自分の両腕で相手の片腕をつかんで左右に振ったりマットにはわせたりして相手のバランスを崩す技術。「2on1」とも呼ばれます。
左手と左足が前に出る左構えの櫻井選手は、相手の利き手を取って崩す方法を模索してきました。
腕を取りに行くタイミング、腕を取ったときの崩し方、相手がふりほどこうとするときの体の動かし方など、相手の出方を想定しながら少しずつ「腕取り」の精度を向上させ、世界選手権3連覇も達成しました。
世界中の猛者が対策を練ってきましたが…。
櫻井つぐみ選手
「得意なのはみんな知っているので、それでも通用するレベルにしたい。対策しても、その先を読んだ展開に持ち込めるようにレベルアップしていきたい」
「腕取り」にこだわる姿勢は全く崩しませんでした。
吉田沙保里さんを破った相手にも
パリオリンピックでも櫻井選手は、この「腕取り」を使って躍動しました。
準決勝の相手は2016年リオデジャネイロ大会53キロ級で、吉田沙保里さんの4連覇を阻んで金メダルを獲得した選手でした。
序盤に2ポイントを先行されますが、ここからも「腕取り」を駆使して優位に立つと、巧みに相手の足を取って4ポイントを奪って逆転。その後もリードを広げて10対4で決勝に進みました。
決勝で対戦したのは去年の世界選手権の優勝を争った相手。そのときは先に3ポイントを奪い、後半に相手の猛攻をしのぐ接戦となりました。
開始の笛。
すると、もともと右構えの相手が左構えで挑んできました。
利き手である右腕を櫻井選手から遠ざけて「腕取り」を防ごうというねらいがうかがえました。
それでも櫻井選手は序盤から相手の腕をうまくたぐるようにプレッシャーをかけ続けます。
そして隙を突いてタックルからポイントを奪うと、その後もリードを広げました。
逆転をねらってきても「腕取り」で応戦。相手の右腕の力をうまくいなすと逆にポイントを追加して突き放しました。
2人の指導者からの教えを胸に鍛え続けてきた「腕取り」。
警戒してきたはずの世界の強豪たちをこだわってきた技術で寄せつけず、小さなころからの夢である金メダルにつなげました。
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【NHKニュース】パリオリンピック2024
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