パリ・オリンピックのボクシング女子66キロ級で9日、「性別」を巡り出場の是非が議論になったアルジェリアのイマネ・ヘリフ選手が金メダルを獲得した。試合後の記者会見で「私は女性として生まれ、女性として生き、女性として戦ってきた。私の尊厳は何よりも大切だ」とアピールした。
決勝戦では、中国の楊柳(ようりゅう)選手と対戦し、圧倒的な実力を示した。序盤から試合の主導権を握ると、3ラウンドともリードして完勝。優勝が決まると、リング上で初めて笑顔を見せ、満員のスタンドに向けてダンスを踊った。表彰台では金メダルをいとおしそうに見つめ、ほかの選手たちと抱き合った。
ヘリフ選手はこれまでも国際大会や東京五輪に女子選手として出場してきた。だが、2023年の世界選手権に際し、国際ボクシング協会(IBA)が実施した性別検査で不合格となり、決勝直前に出場が取り消された。
このときの検査内容は「機密」扱いで、公開されていない。国際オリンピック委員会(IOC)は「恣意(しい)的な手続きだった」と非難し、パリ五輪へのヘリフ選手の出場を容認した。
今大会では、初戦で対戦したイタリアの選手が開始46秒で棄権し、「これほど強いパンチを受けたことがなかった」と語ったことから、世界の注目を集めた。ネット交流サービス(SNS)では出場の是非が議論になり、多くの中傷も書き込まれた。
ヘリフ選手は「SNSではひどい攻撃を目にした」と振り返り、世界に向けてこう訴えた。「五輪の価値を守り、他者をいじめてはならない。これが私のメッセージだ。将来の五輪で二度とこうしたことが起きないことを願う」【パリ金子淳】
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