(9日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 花咲徳栄1―2新潟産大付)

 五回終了後のクーリングタイムで、新潟産大付の吉野公浩監督は選手に語りかけた。「0―1できたので、うちとしては120点。右打者へはアウトコースが多い。踏み込んで腰に力を入れて打て」

 六回、その指示に応えた。右打ちの4番多田大樹が花咲徳栄・上原堆我の外角スライダーをとらえる。左前安打で突破口を開くと犠打と暴投などで2死三塁。千野虹輝も踏み込んで外寄りの変化球を中堅左へ運ぶ。適時二塁打で追いついた。

 流れを戻すと七回、一気に攻める。戸嶋翔人(しょうと)が右前打を放ち、変化球がくると確信した2球目に二盗に成功。「(上原は)体重移動がうまいが、握りが見えた」。二つの内野ゴロで走者が入れ替わって2死三塁。多田が内角の真っすぐを左前に引っ張って決勝点を挙げた。

 10打点を稼いだ新潟大会に続き、勝負強さを発揮した多田は試合中に修正し「重心を落としてコンパクトに振ることを意識した」と誇らしげだ。

 対戦相手の特徴を見極め、足技を絡めて攻め立てる。ノーシードだった新潟大会から貫き、甲子園経験のある4チームを破ってきた戦い方だ。合言葉が「ダークホース」から「ジャイアントキリング(大番狂わせ)をしよう」に変わっても、口先だけとは思えない。

 その願い通り、2017年に全国優勝した花咲徳栄に競り勝ち、新潟勢として7年ぶりに初戦を突破した(20年はコロナ禍のため中止)。「新潟の歴史をもっと変えたい」と多田の威勢がいい。春夏通じた初舞台でつかんだ自信を胸に、夢はまだまだ終わらない。(笠井正基)

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