高校野球・夏の甲子園1回戦(8日)
○京都国際7―3札幌日大(南北海道)●
表情には出さなかったが、塁上で喜びをかみ締めた。京都国際の主将・藤本陽毅選手は先制点を含む2安打3打点の活躍で打線を勢いづけた。
一回、相手の先発投手が制球を乱し、1死一、二塁で打席に立つと、暴投で二、三塁に好機は広がった。相手の切れのある変化球をなかなか捉えられず、ファウルで粘って迎えた7球目。外角に浮いてきた球を逃さずに右前に流し打ち、2点をもぎ取った。
四回にも1死一、三塁から右中間を破る適時二塁打を放つ勝負強さを発揮した。「表情には出せないタイプなんですけど、心の中で喜んでいました」と控えめだが言葉には実感がこもっていた。
言葉数こそ多くないが、小牧憲継監督が「精神的支柱」と認める主将だ。1年夏にも甲子園を経験した攻守の要。しかし、新チーム発足後の昨秋に思わぬ苦難が降りかかった。ウイルス性肝炎を患い、長期離脱を余儀なくされたのだ。
4強入りした近畿大会では出場できず、ボールボーイで試合を見守った。今春のセンバツでは「3番・遊撃」で復帰を果たすと、長打2本を含む3安打の活躍ぶりを見せた。だが、チームは1回戦で青森山田にサヨナラ負け。自らの離脱中に近畿大会を戦い抜いてくれた仲間と甲子園でリベンジを果たす思いは誰よりも強かった。バットを遅くまで振り込んできたことは、その証しだ。
センバツで記録できなかった「みんなのためになる打点」。その思いをようやく果たした先に3年ぶりの初戦突破が待っていた。【下河辺果歩】
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