7月27日に行われたスタッド・ランスとの親善試合。清水エスパルスは日本代表の伊東純也や中村敬斗を擁するフランス・1部リーグのチーム相手に3対0と快勝を収め、後半戦に向けて弾みをつけた。

親善試合で得た自信を胸にリーグ戦へ

スタッド・ランスは過去にリーグ・アンを6回制している古豪だ。

シーズンを前に日本で合宿を張る中、たとえ相手が調整段階であったとしてもエスパルスの力がどれだけ通用するのか推し量るには重要な一戦と言える。

集まった観客は約1万1000人。

その中で、エスパルスの守備陣は攻撃の芽をしっかりと摘み、攻撃陣も必要な場面でしっかりとゴールを決めた。

ただ、4人の外国人選手を前線に配置するフォーメーション。これは今までのエスパルスでは見たことがない戦術だった。

特に出色だったのはルーカス ブラガだ。

前半27分に一瞬テンポを変えて中央からドリブルで切り込むと、狙いすまして右サイドネットにボールを突き刺し先制。

その後もスタッド・ランスの伊東がドリブルなどで仕掛けるものの、マークに入った吉田豊が粘り強く立ちふさがり自由を与えない。

すると前半終了間際、北爪からのパスを受けたブラガがまたしてもドリブルで抜け出し、冷静に右隅に送り込みゴール。2対0とリードを広げ、前半を折り返す。

エスパルスは後半にも途中出場の西原や乾が切れある動きで攻め込み、得点への期待感をあおると、アディショナルタイムには前線のプレスからカットしたボールを北川・乾とつなぎ最後は成岡が押し込んだ。

また、センターバックの住吉・蓮川コンビが復活したのも心強い。シーズン当初から清水の“門番”を務めた2人は、途中ケガにより離脱していたが治療を終えて戦列復帰。安定感のある守備でスタッド・ランスを封じ込めた。

今回の結果について、指揮官は「欧州のプロチームに勝っているのはウチだけ」と自信をのぞかせつつ、「ランスに勝ったことで次の勝利が約束されたわけではない」と表情を引き締める。

確かに今年の異常な暑さは選手の集中力を削ぎ、守備陣にスキが生まれやすいのは事実だろう。

それだけにチームスローガンである「超攻撃的」「超アグレッシブ」を自慢の攻撃陣がいかに体現できるかがカギとなる。

今シーズンも残すところ14節となり、これまで以上に1戦1戦の重みが増す。

ただ、首位の座を譲るつもりは毛頭ない。

最高のリスタートを切るべく、まずはアウェーでの仙台戦に臨む。

秋葉監督「一戦必勝」

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-スタッド・ランス戦で勝利
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
このところの親善試合で欧州のプロチームに勝っているのはウチだけなので、とても自信になる。選手の組み合わせについても試させてもらったし、選手もいい顔をしていた。特に外国人4人を攻撃陣で並べたのはいい意味で融合して、お互いの良さを活かすことができた。

今後も良さを引き出せるように、4人にももっと要求しあって、より一層、点を獲れるようにしてもらいたい。

ただし、ランスに勝ったことで次の勝利が約束されたわけではない。みんなで気を引き締めながら次のアウェー・仙台戦に挑みたい。

-具体的な収穫は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
暑くなればなるほど攻撃には差が出やすい。守備は暑い中でしんどいもの。我々は超攻撃的で超アグレッシブと普段から言い続けている。そこが存分に発揮できる手応えを十分感じられた。

我々はゲームの結果でそれを証明できなければならない。夏は攻撃力があるチームが強いと思っている。しっかりやりたい。

-次節の相手・仙台について
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
仙台はここのところ2連敗。中断明けで絶対に修正してくる。森山監督は戦う姿勢やメンタリティを注入しているはず。

非常に難しいゲームになるが技術・戦術だけではなく、相手以上に走る、相手以上にメンタル的に上回るといったことが重要になる。タフなチームだと思う。

選手たちには「一戦必勝」「目の前の相手に勝ち続けていけば目的に近づく」と強く言っている。

1戦1戦、特にアウェーについて、仙台戦ではいっぱいの観客になる。相手はハードな守備で入ってくる。我々はそれ以上にハードワークしなければならないし、上回る技術や判断力を発揮しなければならない。仕留め切るために全員の大きなエネルギーと大きな情熱が必要。

-中断期間を経てチームの状況
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
理想通りにとか、完成形を望むのではないが、チームには年間を通して波ができる。人がやっているスポーツだけに良い時と悪い時がある。安定して高いレベルでできるのが理想だが、アウェーで連敗していた時は正直波があった。

この中断期間で70~80%の安定した力が出せるようになった印象がある。100点を狙いに行くが、何事もミスなく上手くいくことなどない。高いアベレージで毎試合安定性を保てることがチームの自信になってきた。そこをあと14試合続けられるか気を引き締めながらやりたい。

-低いレベルにならないためのアプローチとは
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
毎日練習を見ている中で、「ここが懸念材料」というようなことは発見しようと考えている。いかにそれを察知できるか。間違えないというのはスタッフやメディカル、指導者の役目。そうしたことを見落とさないように心掛けている。

-中断期間中に移籍があったがチームに与える影響は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
プラスの要素しかないと持っている。選手間で受け入れるメンタリティだとかあるが、受け入れられる選手たちであると信じている。そこがクラブの良さだとも思っている。力強い仲間が加わったので、競争原理がある中、また1つピリッとした要素が加わり、いい緊張感が生まれるのではないかと感じている。

-暑さ対策が重要になるのでは
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
休養と栄養が大事だと思っている。トレーニングの質は落とさない。いかにトレーニング外の時間を使うか、プロとして問われている。毎日のケアをどうするか。やれる選手がレギュラーになるし、一流だと思う。若い選手もそういう習慣づけをして欲しい。

ブラガ選手「もっともっと調子を」

清水エスパルス・ルーカス ブラガ 選手:
ランス戦で2点獲れたことは、このブレイク中に準備がしっかりできたから。ランスはフランスでも伝統のあるクラブ、そこで得点できたのはとてもうれしいこと。彼らも日本のインテンシティの高さを実感できたのではないか。アジズと協力してワンツーでスペースができて決められた。イメージ通りにシュートを打てた。

髪型が大きく変わったのは、妹がこういう技術を持っていたのでやってもらった。彼女の夢だったから協力した。エクステンションで伸ばしてゴムで伸ばした感じ。3時間半ほどかかった。よかったけどちょっと暑い(笑)

ランス戦には妹と母親が来てくれて、その前でゴールを決められたのはギフトになって良かった。

チームの目標に向けて、もっともっと調子を上げていきたい。ホームの仙台戦相手はタイトにやってきた。いま相手は2連敗中なので強い気持ちで来る。それを跳ね返して頑張りたい。

住吉選手「1発目は非常に大事な」

清水エスパルス・住吉ジェラニレショーン選手:
約1カ月ぶりの先発で90分間の試合、頭と体の整理をして臨むことを目標として、また海外チームとやるのも久しぶりで、有意義な時間になった。身体能力が高く、身長も高く、手足が長いというのは過去の経験からわかっていたので再確認できたし、J1にはそんな選手もいるのでいい経験になった。

蓮川選手と組むのは3カ月ぶり。良い感覚でセンターバックを組めた。まだ100%ではないが、体はほとんど戻っている。試合での頭の使い方はまだ戻り切っていないが、そうしたことに気付けるだけの成長は感じている。1週間前にフランスの一流クラブとできたのはいい経験になった。

出ていない時間、ケガがあるのは仕方がないこと。高木選手などよく戦ってくれた。自分はそのポジションを奪還しなくてはならないが、切磋琢磨できる人がいるのはよい。年下に負けられないとか意地の部分でも良いトレーニングを積めた。

仙台はホームでは勝っているし、中断前、大分に勝てていい雰囲気。だが、彼らは連敗からの盛り返しを狙っている。ここ1発目は非常に大事な試合。勝って帰りたい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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