(29日、第106回全国高校野球選手権岡山大会決勝 岡山学芸館4―3関西)
岡山学芸館の佐藤貴博監督は、決勝の先発マウンドに今大会好調の丹羽知則(3年)ではなく、エース沖田幸大(同)を上げた。「調子の良い悪いで野球をする選手ではない。一番精神的に安定して安心感がある」
だが立ち上がり、その沖田が浮足だった。最も警戒していた1番渡辺諒斗(まさと)(同)に安打と二盗を許し、送られて1死三塁。松田大輝(同)のスクイズは投前へ転がった。
渡辺の俊足を考えれば本塁に送球しても間に合わないタイミング。なのに「いけると思って慌ててしまった」と沖田。ボールがグラブに収まらず、先取点を許し打者走者まで生かしてしまった。
挽回(ばんかい)の機会はすぐ来た。直後の二回、2死一、二塁での打席。「自分のミスで点を取られたので、絶対自分で取り返すとくらいついていった」。右中間を抜く逆転の2点二塁打を放ち、塁上で拳を突き上げた。
春の県大会で関西に敗れ、夏のシード権を失った直後、沖田は丹羽と2人、監督室に呼ばれた。「1時間半ぐらいこんこんと説教しました」と佐藤監督。沖田は「自覚と責任感を持て、と強く言われました」と振り返る。2人は練習に取り組む姿勢から改め、この夏は交互に先発して次々にシード校を破った。
1点リードの八回2死、ここまで2安打の渡辺を迎えた。継投を考えた佐藤監督だが「確認したら『投げさせてほしい』というので、じゃあ自分で責任取りなさいと」。沖田は会心のカットボールで渡辺を遊ゴロに仕留め、思い切り声をあげた。九回は救援する丹羽に水を手渡して送り出した。
応援席へのあいさつを終えると、沖田はひざから崩れ落ち、地面に手をついた。「アドレナリンが出てたのが折れました」。代わりに涙が出た。
今大会5試合22回を投げて四死球0。身上のコントロールの良さを存分に発揮し、甲子園に乗り込む。「一戦一戦、一球一球を大切に戦っていきたい」(大野宏)
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