(29日、第106回全国高校野球選手権東東京大会決勝 関東第一8―5帝京)

 関東第一の真骨頂だった。

 3点リードを本塁打などで逆転された直後、四回の攻撃だ。先頭の小島想生(そお)が左前安打で出ると、二つの犠打に敵失も絡めて1死二、三塁。ここで左打者の1番飛田優悟が、たたきつけるように打球を二塁手の方向へ。二ゴロの間に、同点の走者が難なく生還した。

 その間たったの6球。すぐに流れを引き戻した。

 「相手からしたら、ヒットなしで点を取られる方が嫌だと思う」と飛田。米沢貴光監督も、「うちはあれしかないので」としたり顔だ。

 五回は相手のミスに乗じて一挙4得点。内野ゴロやバント安打が効いた。

 春の都大会4回戦では修徳に0―1で敗れた。得点力をあげるため、「原点」に立ち返った。

 バントや進塁打に、隙を突く大胆な走塁。2015年夏の全国選手権で4強入りを果たしたオコエ瑠偉(巨人)ら、先輩から受け継ぐ伝統の野球スタイルだ。

 米沢監督は「うちは全員に『1回戦からノーヒットでも優勝に貢献すること』『バットに当たったらホームまでかえって来い』と言っている」。127チームが出場する東東京大会を勝ち抜くために貫く、「高校野球の王道」なのだという。

 4番の高橋徹平は六回に打球を左前に運んだ際、巨体を揺らしたままスピードを緩めず二塁を陥れ、二塁打とした。決して俊足ではない主将の走塁意識が、チームカラーを象徴する。強振を貫く春の東京王者、帝京との点の奪い合いを制し、2019年以来の頂点に立った。

 5年ぶりの甲子園となった今春の選抜は、八戸学院光星(青森)との開幕試合で延長十一回タイブレークの末に敗れた。勝利の校歌を歌うことなく、あっけなく終わった。チームの完成度を高めて戻る大舞台に向け、高橋は言った。

 「忘れ物をしてきたので、それをしっかり取りに行く」。=神宮(大宮慎次朗)

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