(29日、第106回全国高校野球選手権東東京大会決勝 関東第一8―5帝京)
実力校同士のぶつかり合いとなった決勝、関東第一の控えの豊泉陽(はる)(3年)はいつも通り声と笑顔でチームを引っ張った。
五回表1死二塁のチャンス。タイムがかかり、打席にいた7番小島想生(そお)(同)に水を持って行くと、小島からこう声をかけられた。「緊張してて……。気合を入れてほしい」
豊泉は右手で一発、小島の背中を強くたたいた。そして、満面の笑みでこう言った。「絶対打てるから!」。小島は小さくうなずくと、中前安打を放ち好機を拡大。豊泉も思わずガッツポーズした。
身長160センチ。ベンチ入りメンバーの中では最も小柄だ。「体が大きくない分、声と笑顔で誰よりもチームに貢献すると決めている」。どんなに劣勢でもピンチの場面でも、ベンチの最前列で笑顔で前向きな声を出し続けてきた。米沢貴光監督は「明るくてとにかく元気がある子。守備がうまくて、信頼しているんです」。
六回裏、その守備の機会が訪れる。三塁の守備につくと、いきなり打球が飛んできた。落ち着いて捕球し、一塁へ。送球はややそれたがアウト。「あぶねー!」。笑顔で叫びながらベンチへ戻ると、仲間がハイタッチで迎えてくれた。
七回の打席では、一球ごとに笑顔でベンチを見た。一塁ゴロだったが、全力で一塁側のブルペン付近まで走り抜けた。
今春の選抜大会に続く甲子園。春は出番がなかった。「甲子園でもチームを元気にします。でも、次は甲子園で試合に出てみたいですね」。照れくさそうに笑った。=神宮(吉村駿)
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