ともえ投げと関節技

角田選手の得意技「ともえ投げ」。

世界の強豪たちが「わかっていてもかかってしまう」と評するほどの破壊力で知られています。

そしてそこから派生する「腕ひしぎ十字固め」などの関節技は角田選手が柔術の道場にも通って鍛えたもので、対戦相手の「参った」は大会ではよく見られる光景になってきました。

その得意技で、世界選手権を3連覇した実績を誇る角田選手ですが、オリンピックイヤーとなったことしはけがに悩まされ続けました。元々痛めていた右ひざに加え、3月の国際大会では左ひざを痛めるアクシデントに見舞われたのです。

その大会では優勝こそ果たしましたがその後、およそ1か月は柔道着を着た稽古を積まず、トレーニングやリハビリに時間を充て、本格的に稽古を再開できたのは5月でした。

ふだんから繰り返し「準備」の大切さを口にする角田選手。

大会が迫るなかで満足に稽古ができない状況に「左ひざが治ったら右ひざ、右が治って練習を積めるぞとなったら左が痛くなって、一気に上げたいという時に上げさせてくれない体だなと。楽しみよりも不安が大きくなっている。焦りはある」と率直な思いを語っていました。

“ともえ投げ”“ともえ投げ”“ともえ投げ”

それでも迎えたパリオリンピックは得意技で押し切るいつもの柔道を貫きました。

初戦となった2回戦は開始29秒でともえ投げで技ありを奪うと、そのまま腕ひしぎ十字固め。流れるように得意技を連続で決めて45秒で相手を退けると、続く3回戦も同じ流れで1分余りで勝利を収めました。

この日、最もともえ投げが強烈に決まったように見えたのは最大のライバルと警戒していたフランスのシリヌ・ブクリ選手との準々決勝でした。

地元でもあるブクリ選手に大声援が送られる敵地とも言える中での対戦でしたが、「試合になると声は聞こえなくなる」と冷静に畳に向かいました。

積極的に投げを仕掛けながら開始1分。

強敵を放り投げるように一回転させて畳にたたきつけ、一本を奪いました。

やっぱり最後も

さらに決勝。

対戦するモンゴルの選手はことしの世界選手権を制した実力者です。

警戒する相手からなかなかポイントが奪えませんがやっぱり最後は「ともえ投げ」でした。

今度は踏ん張ってこらえる相手を強引に引っこ抜くような力強さで技あり。

そのまま、勝利を収めて初めての金メダル獲得を決めました。

畳の上では落ち着いた表情を見せましたが試合後には「けがが多くて、全然練習が積めていなくて、不安がいっぱいなままの試合だった。決勝に行く前も、『もっと練習したかった』とことばが出るくらい、まだまだ足りなかった」とやはり苦しい思いを抱えて畳に上がっていたことを明かしました。

そして「諦めないでよかった」という思いは表彰台で流した涙にもあらわれているように感じました。

五輪王者はさらに上を見る

磨いてきた得意技で苦境をはねのけてオリンピックの金メダルをつかみとった角田選手。

代名詞とも言える「ともえ投げ」については「警戒されていたので、もっと精度を高くしたい。ちょっと逃げに走っている部分もあったので、そのあたりを改良していけたらなと思います」と反省も忘れませんでした。

新しいオリンピックチャンピオンになった31歳は次の「準備」に入り、まだまだ強さを追い求めそうです。

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