(28日、第106回全国高校野球選手権西東京大会決勝 日大三9―10早稲田実)

 今夏、木製バットで本塁打を2本放った注目のスラッガーは決勝、チームプレーに徹した。

 今大会最多の約2万人が来場し、独特の緊張感があった一回。早稲田実の主将、宇野真仁朗(3年)は無死一塁の場面で右中間に二塁打を放ち、貴重な先取点をもたらした。

 試合はその後、点を取り合う打撃戦に。だが、宇野は「自分の欲を出さず役割を全うするだけ」と、長打を狙うわけではなく、あくまで塁に出ることを心がけた。二回は死球、四、六、八回は四球と全打席で出塁。八回には盗塁を決め、次打者の適時打で同点の生還。サヨナラ勝ちへの道を作った。

 大会前、自身もチームもどん底だった。打撃不振に陥り、チームも練習試合で勝てなかった。「高校生活で一番苦しかった」

 それでも、主将として、若いチームが成長しやすい環境作りを心がけてきた。ベンチ入り選手20人のうち11人が1~2年生。「(全学年の)全員が戦力で、役割がある」と伝え、後輩とも同じ目線で話した。「(後輩が)やりにくさを感じないチーム」を目指した。

 今大会、その1、2年生とともに苦しみながら勝ち上がってきた。

 初戦の明大八王子戦は九回1死まで負けていたが、延長十回タイブレークで逆転勝ちした。準々決勝の国学院久我山戦では9点のリードを追いつかれ、約3時間半に及ぶ激闘になったが、競り勝った。乗り越える度に強くなった。和泉実(みのる)監督は「大会中に選手が成長した」。

 苦しんでつかんだ甲子園。「(日大)三高さんじゃなかったら、こんな最高の試合はできなかった」。宇野が率いる早稲田実は決勝でさらに強くなり、夢の舞台に臨む。=神宮(中村英一郎)

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