(27日、第106回全国高校野球選手権大阪大会準決勝 大阪桐蔭12―2履正社=5回コールド)
まだ一回裏。顔からしたたり落ちる汗をぬぐう余裕もない。自分の呼吸が大きく聞こえる。
履正社のエース高木大希投手(3年)はキャッチャーミットめがけて強く腕を振った。良いボール。そう思うけど、外野へはじき返される。
5安打を浴びるなどし、4失点。一回途中でマウンドを降りた。
履正社のグラウンドと家が近く、練習がしやすいと入学した。昨夏の甲子園ではマウンドにも立った。
秋からエース。自主練習の時間は1人で自分の課題と向き合った。仲間たちが「誰よりも努力してる」「野球に対して一番まじめ」と言い、多田晃監督は「エースの自覚と責任を強く持っている」と語るほどだ。
「毎日、目標がなければ練習の意味がない」と、A4のノートに今日の反省と明日の目標を書いた。さらに1年、1カ月、1週間の目標をそれぞれ立て、自分の部屋の机の上に貼って日々見た。
直球の質にこだわり、冬は走り込みや投げ込みに取り組んだ。平均球速は4キロ上がった。
直球頼りで試合に敗れると、変化球の球種を見直した。変化球でピンチを抑えられるようになった。公式戦でも練習試合でも、負けから逃げず、そこから見えた自分の課題に一つひとつ向き合ってきた。
帽子のツバには「欅(けやき)」の文字。硬くて強いことで知られる木だ。風にも雨にも負けない強さ――。自分もマウンドでそうありたい、という思いを込めた。
昨夏に続く甲子園出場はかなわなかった。高木投手は「昨夏は先輩に連れて行ってもらって、今度はぼくが連れて行く番だった。ただただ、力不足だった」と話す。
反省を洗い出したら、またノートに明日の目標を書こうと思う。(西晃奈)
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