(27日、第106回全国高校野球選手権鹿児島大会決勝 神村学園8―0樟南)
九回。2四球と安打で無死満塁のピンチを招いた。
「ちょっと力んでしまった」
神村学園のエース今村拓未は一呼吸を置く。力を入れるあまり、投球フォームのバランスが崩れていたことに気づいた。「ゾーンで勝負」。自らにそういい聞かせた。
最速144キロの直球を主体に押し、3者連続三振に仕留めた。被安打6、8奪三振の完封で2年連続の甲子園に導いた。
準決勝までの4試合ですべて2桁安打の強力打線が神村学園の「売り」だが、身上は「守備からリズムをつくる」。今村は「自分はテンポがよくない方なので」と、自らの課題を自覚しつつ、ストライク先行を心掛けた。打線も12安打8得点と投打がかみ合った。
昨冬に左ひじを痛めた。今春の選抜では1回戦の作新学院戦(栃木)、2回戦の大阪桐蔭戦に、ともにリリーフで計5回を投げたが、「短いイニングしか投げられなかった」と悔やんだ。
夏に向け、長いイニングを投げたい。エースのプライドが許さない。「もう一度、体づくりをしよう」と決意した。
ランニングやダッシュなど下半身を中心に鍛えた。春以降、体重は5キロ増え、体は一回り大きくなった。
「成果」は直球に表れた。練習試合で登板すると、打者が直球をファウルすることが増えた。球に切れが出たことで、それまであまり使わなかったカーブで緩急を使えるようになった。
鹿児島大会では、決勝を含めて4試合を投げ、計20回⅔を無失点と、エースの存在感を示した。
昨夏は全国4強。2回戦の市和歌山戦で先発した今村は⅔回、3四死球で降板した。
「頭が真っ白になった。冷静さを失った」
そんな苦い経験を糧にできるだけの準備は整えた。目標は全国制覇。今度は甲子園で成長した姿をみせる。=平和リース(鷹見正之)
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