(25日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会準決勝、県岐阜商9―3岐阜各務野)

 初回、県岐阜商打線が岐阜各務野にいきなり襲いかかってきた。1番日比野遼司選手(3年)の右前安打を皮切りに3番から7番まで長短5連打を浴び、4失点。

 「すごい打線だ。完璧なところに投げないとアウトが取れない」。岐阜各務野の捕手・門田杜和主将(3年)は痛感した。

 だが、ある程度の失点は覚悟していた。ベンチでは全員が「まだだぞ」と声を掛け合った。門田主将はエースで先発の日下部瑠輝投手(3年)を励ました。「自分たちが絶対取り返す。腹をくくって投げろ」。日下部投手は答えた。「お前を信じて投げる」

 猛練習を積んできた。その一つが「10万回スイング」。昨秋から毎日1千回以上の素振りを続けてきた。今夏までにほぼ全選手が達成した。「春以降、みんな変わった。長打が増え、二桁得点も取れ始めた」

 三回。1死一、三塁の好機で迎えた打席。「どういう形でもいいから点を取ろう」。大きな犠牲フライで追加点を奪い、スタンドを沸かせた。

 3点を追う六回。県岐阜商のマウンドにはエース森厳徳投手(3年)が登った。最速149キロの速球派。いきなり三者三振ですごみを見せる。だが門田主将には10万回スイングなどに裏打ちされた自信があった。「自分が打てばチームが盛り上がる」。八回、森投手からのチーム初安打となる左前安打で仲間を鼓舞した。

 リードもリズムに乗ってきた。日下部投手は「完璧でした」。バッテリーの信頼関係は厚い。「あいつを信じています。サインに首を振ったことは今まで一度もありません」

 迎えた九回。チームは執念を見せる。連続安打を絡めて2死満塁の好機で打席に入った。「みんなが『門田に回すぞ』と言ってくれて」

 だが結果は無念の外野フライで試合終了。「勝ちたかった。打ちたかった。みんなに申し訳ない」。言葉を詰まらせた。

 目標の甲子園には届かなかったが、「みんなで声を出して諦めずにやれた。成長を実感できた。楽しかったです」と前を向いた。(高原敦)

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