(25日、第106回全国高校野球選手権千葉大会準決勝、市原中央3―6市船橋)

 ミスを取り返す機会を待っていた。

 1点差に詰め寄った四回裏1死満塁で、市船橋の上林武蔵(3年)に打順が回ってきた。

 「満塁なので内角には投げづらいだろう。コースに逆らわず逆方向のイメージで打つ」。1年から捕手として試合に出る上林は、豊富な経験から相手バッテリーの心理を読み、狙いを絞った。

 4球目の外角に来た変化球をイメージ通りに右前へ流し、同点の三塁走者が生還した。

 「追いついた」。安堵(あんど)する気持ちを抑え、塁上から次打者の代打江川煌人(3年)を「もう1点!」と鼓舞した。後続が好守に阻まれ勝ち越しとはいかなかった。

 上林は1年の夏にベンチ入りし、2022年の夏の甲子園も経験した。今年のチームについて「3年間で一番守備は堅いです」。ただ、この日は上林が初回の守りでミスをし、そこから2点を先取された。

 先発は2年の宮永千聖。上林は「不安の中にいる2年生投手を助けられなかった」。序盤は守りからリズムをつくり、攻撃につなげる市船橋の野球ができなかった。守備の要であり、先輩でもある上林は責任を感じる中での一打だった。

 上林には2年前の甲子園のベンチから見た風景で、今も鮮明に覚えていることがある。「スタンドの応援と自分たちの野球が一つになる中、3年の片野(優羽)さんが本塁打を打ったのは一番印象に残っている」。片野さんも捕手で、初戦の興南戦で八回にソロ本塁打を放った。「一つの目標でもある。片野さんのようにホームランを打つ打者ではないけど、一番自信のあるのが守備。甲子園で盗塁を刺したい」

 再び夢舞台を踏むまであと一勝。=ZOZO(杉江隼)

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