100年ぶりにフランスの首都 パリで開催される今回のオリンピックは『広く開かれた大会』をスローガンに、セーヌ川で開会式が行われ、8月11日までの17日間の日程で、コンコルド広場など、街なかも競技会場となって実施されます。

パリ大会には、32競技の合わせて329種目に200ほどの国と地域などから、男子がおよそ5700人、女子がおよそ5500人の合わせて1万1000人余りの選手がエントリーしています。

難民選手団は、前回の東京大会より8人増えて、これまでで最も多い37人となっているほか、ウクライナへの侵攻によって、国としての参加が認められていないロシアと、その同盟国のベラルーシ国籍の選手は『AIN』と呼ばれる「中立な立場の個人資格の選手」として、合わせて32人が出場する見込みです。

日本選手団の選手数は、体操女子の宮田笙子選手が大会直前に出場を辞退して409人となりましたが、海外で行われる大会では、2008年の北京大会を上回り、史上最多となっています。

開会式では、
▽新競技・ブレイキンのダンサーネームShigekix、半井重幸選手と
▽フェンシングの江村美咲選手が
日本選手団の旗手を務め、フランス国内などをつないできた聖火が、聖火台に点火されます。

JOC=日本オリンピック委員会は、パリ大会のメダル目標について、海外で行われたオリンピックでの過去最多を超える、金メダル20個、メダル総数55個の獲得を目指すとしています。

“お家芸”とされる柔道や体操、レスリングのほか、スケートボードやブレイキンなどのアーバンスポーツでも、日本勢のメダル獲得が期待されています。

また、バレーボールやバスケットボールなどの団体競技の躍進にも期待が高まっていて、自国開催となった3年前の東京大会を経て、日本勢がどのような戦いを見せるか注目されます。

一方、今回のパリ大会は、
▽従来よりも環境に配慮した大会を目指すほか
▽競技会場に既存の施設を活用してコストを抑えることや
▽出場選手の男女比率を1対1にすることを目指して混合種目を増やすなど
さまざまな取り組みも行われ、今後のオリンピックのモデルケースとなり得るかも注目される大会になります。

「平和の祭典」国際情勢の緊迫続く中 テロ警戒も

今回のオリンピックは「持続可能な大会」を目指し、競技会場の95%に既存または仮設の建物が使われるほか、「ジェンダー平等」を促進するため出場選手の男女比を同じにすることを目指してきました。

一方で、オリンピックは「平和の祭典」とも言われますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシアとその同盟国のベラルーシ国籍の選手は、侵攻を積極的に支持していないことなどを条件に「中立な立場の個人資格の選手」として出場します。

また、パレスチナのガザ地区へのイスラエルの攻撃を受け、24日に行われたサッカー男子イスラエル代表の試合では一部の観客がパレスチナの旗を掲げて抗議したほか、イスラエルの国歌斉唱中にブーイングが起きる事態となりました。

国際情勢の緊迫が続く中、開会式が行われるセーヌ川沿いではおよそ10キロにわたって立ち入り制限区域が設けられるなど、テロへの警戒が高まっています。

NHKのインタビューに応じた大会組織委員会のエスタンゲ会長は、安全の確保が最優先だとした上で「選手たちは、平和やスポーツを祝い、感動を分かち合える場所があるという希望のメッセージを送ることになる。国際的な緊張の中、世界中の人たちが『互いに分かち合い、スポーツのもとに集まろう』と言えるようになってほしい」と述べ、大会の成功を通じて世界中に平和の実現を訴えたいとしました。

フランスの過去のテロ事件

フランスでは2015年以降、大規模なテロ事件が相次いで発生してきました。

2015年1月には、イスラム教の預言者の風刺画を掲載した新聞社「シャルリ・エブド」などがイスラム過激派の男らに襲撃され、あわせて17人が殺害されました。

同じ年の11月に起きた同時テロ事件では、週末の夜、多くの人でにぎわうコンサートホールなど8か所が過激派組織IS=イスラミックステートのメンバーに襲撃されました。

パリ郊外のサッカースタジアム近くで自爆テロが起きたほか、パリ中心部のバーやレストランなどで男たちが銃を乱射し、一連の事件の犠牲者は130人に上りました。

さらに2016年7月には南部ニースで花火の見物客にトラックが突っ込んで86人が死亡し、ISが関与を主張しました。

2023年の12月には、オリンピックの競技会場などにもほど近いエッフェル塔周辺で、ISの影響を受けたとみられる男が通行人を刃物で殺害しました。

さらに、ことし5月、フランス内務省は、中部サンテティエンヌで、ロシア南部チェチェン出身の18歳の男をテロを企てた疑いで逮捕したと発表しました。

男はイスラム過激主義に触発され、オリンピックのサッカーの競技場で、訪れた観客や警察を襲撃し、みずからも死を遂げる計画を立てていた疑いがあり、内務省はパリオリンピック・パラリンピックを狙った攻撃を阻止した初めてのケースだったとしています。

また、6月にはパリ近郊のホテルの一室で爆発物を作ろうとしていたとしてウクライナとロシアの二重国籍を持つ26歳の男がテロを企てた疑いなどで拘束されました。

パリ五輪の警備状況は

フランスではことし3月以降、全土でテロへの警戒レベルを最高水準に引き上げていて、オリンピックの期間中は軍や警察などが厳重な警戒を行う方針です。

特に、26日には夏の大会としては初めて競技場の外で開会式が行われ、選手たちが船に乗ってセーヌ川をパレードする予定です。

警備の難しさも指摘される中、広範囲にわたって厳しい警戒態勢が敷かれています。

川沿いでは開会式の1週間以上前からおよそ10キロにわたって金属フェンスなどで警戒区域が設けられ、観客や関係者以外は原則として入れません。

この区域内に住んだり通勤したりしている人は専用の通行許可証を申請してQRコードを取得し、提示する仕組みです。

選手たちが開会式のパレードに向けて船に乗る場所では軍がボートや無人機で警戒するほか、パレード中も警察がボートなどで警備にあたります。

地元当局によりますと、開会式当日は警察官など4万5000人が動員され、その後も連日、およそ3万人の警察官が競技会場などの警戒にあたるほか軍の兵士も動員されるということです。

大会組織委員会のエスタンゲ会長は7月21日の記者会見で警察や軍、それに民間の警備会社に加え、およそ40か国から警察などの応援要員を受け入れ、国際的にも連携しながら安全な大会を実現すると強調しました。

また、暫定内閣のダルマナン内相は開会式前日の25日「開会式や大会について明確な脅威があるわけではないが、細心の注意を払っている」と述べ、最大限の警戒を続ける姿勢を重ねて示しました。

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