第106回全国高校野球選手権群馬大会は25日は準決勝があった。第1試合は健大高崎が延長タイブレークで前橋育英を下し、2年ぶりの決勝進出を決めた。第2試合の前橋商―樹徳は、雷雨のため大会史上初の継続試合となった。26日に五回裏の樹徳の攻撃から試合を再開する。前橋商は2年連続、樹徳は2年ぶりの決勝進出を目指す。

(25日、第106回全国高校野球選手権群馬大会準決勝 健大高崎9-8前橋育英)

 6点差をつけられて迎えた九回裏。前橋育英の選手らは、誓い合った。

 「奇跡を起こそう」

 4安打、四球に暴投も絡んで、出塁した走者が6人連続で生還。土壇場で追いついた。先発した左腕の黒岩大翔(ひろと)(3年)は思った。「みんなの思いが、つながった」

 嬬恋村出身で、キャベツ農家の実家で育った。小学校の頃に前橋育英の試合を見て、かっこよさとチームの雰囲気の良さに憧れた。入部を決め、親元を離れて寮に入った。「洗濯も掃除もしたことないのに一人でやっていけるかな」という母・未央(みお)さん(48)の心配をよそに、チームを引っ張るエースに成長した。

 今大会では、準々決勝まで17イニングを投げて24奪三振。準々決勝では9回を辛抱強く投げ、チームに逆転勝利を呼び込んだ。だが、この試合で左手中指の指先にできていたマメが潰れた。

 この日も痛みはあったが、「自分にできることをやりたい」との一心で一人ひとりの打者を打ち取ることに集中した。しかしスライダーが投げづらく、コントロールに苦しんだ。三回に3点を奪われて逆転を許すと、四回から左翼に回った。

 マウンドを譲ってからは、思いを託すつもりで外野から投手に声を掛け続けた。失点を重ねる一方で、三回以降は得点圏に走者を出しながらあと一本が出なかったが、思いが、打線がつながった九回は、春の選抜王者に「あのままの流れでは負けていた」(健大高崎の箱山遥人主将)と思わせるほど、追い詰めた。

 「勝てなかったけれど、粘り強く、諦めずプレーして、前橋育英のプライドを見せられたと思います」と黒岩。かつて全国を制覇したチームの意地を示した。(中沢絢乃)

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 準決勝第2試合の前橋商―樹徳は雷と大粒の雨が続き、江積利雄球審が継続試合を宣告した。

 前橋商は五回表の攻撃を終えており、住吉信篤(のぶあつ)監督は1イニング攻撃が少ない点を懸念材料に挙げ、「最初の守備が大切になる。全力で守りたい」と語った。

 樹徳の園田寛汰(かんた)主将(3年)は「相手に流れがきているところで、間(ま)ができたのは、自分たちにはプラスの要素があった。簡単な試合じゃなかったから、いつもより考える時間が多かったのはよかった」。勝てば27日の決勝まで連戦になるが「体力面にも余力があるので大丈夫。粘り強く戦う自分たちの野球をしたい」と語った。(中沢絢乃、抜井規泰)

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