(24日、第106回全国高校野球選手権岡山大会準々決勝 金光学園3―0倉敷商)

 3点を追う九回、倉敷商は先頭打者が二塁打で出て、「2人の主将」に回した。まずは登録上も主将の4番・広野利治(3年)。「最後まで笑顔で」と白い歯を見せて打席に向かったが、空振り三振。続く5番・山下颯太(同)は遊飛を打ち上げ、少しうつむいてベンチへ戻った。ほどなく試合は終わり、2人並んで相手の校歌を聞いた。

 昨夏の岡山大会決勝でおかやま山陽に敗退。その後、新主将はなかなか決まらなかった。部内投票は、決勝で3、4番を担った広野と山下がほぼ同数。梶山和洋監督が「どっちもやりたいなら2人でやったらどうだ」と提案し、ダブルキャプテンで秋の公式戦に臨んだ。

 「最初は自分が主将登録だったんですけど、じゃんけんが弱いんで。春から広野に代わったら県大会で優勝できたので、夏もそのまま」と山下は説明する。

 時にぶつかりながら、お互いの得手不得手を補ってきた。「山下は話をまとめるのがうまい。でも人に強く言うのは苦手なので、そこは自分が」と広野。「広野は難しい状況を変える打撃ができる。自分は守備でミスが出たとき、一塁手として周りに声をかけてきた」と山下はいう。

 昨夏より二つ手前の準々決勝で、二人三脚は終わった。広野は「投手が頑張ったのに、打てなくて悔しい」。山下は「守備からリズムを作る自分たちの野球ができなかった」と悔やんだ。

 「山下のおかげでここまで来られた」(広野)。「小、中でも主将でしたけど、同じ立場に広野がいた高校が一番楽でした」(山下)。進む道は異なれど、2人はそれぞれ野球を続けていく。(大野宏)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。