交流戦の巨人戦で安打を放ち、ベンチに向かって拳を固める日本ハムの上川畑大悟選手=エスコンフィールド北海道で2024年6月16日、貝塚太一撮影

 プロ野球のマイナビオールスターゲーム2024(第1戦=23日・エスコンフィールド北海道、第2戦=24日・神宮)に日本ハムの上川畑大悟選手(27)がファン投票のパ・リーグ二塁手部門で初選出された。2022年ドラフト9位でプロ入りし、支配下選手では12球団ラストとなる77番目、いわば「全体最下位」指名だった。だが、その歩みは入団時の「プロに入れば順位は関係ない」との意気込みを体現している。

 2日に本拠地・エスコンフィールドであったロッテ戦。五回1死二塁で、上川畑選手は高めの速球を豪快に引っ張り、右越えにアーチを架けた。身長167センチの小柄な体に秘めたパンチ力が光る2年ぶりの今季1号だった。

 「これなんだよ」。この一発をそう喜んだ人がいる。社会人のNTT東日本(東京都)で上川畑選手を指導した飯塚智広さん(48)だ。現役時代は教え子と同じ小柄な左打者で、巧打を武器に00年シドニー・オリンピックでは日本代表でプレーしたアマチュアの名選手だ。

 上川畑選手は日大時代から守りには定評があったが、打撃ではレフト方向への流し打ちが目立っていた。「何となくバットを振っているように感じた。自分のバッティングを発見してほしい」と飯塚さんが求めたのが力強く引っ張る打撃だった。

2021年の都市対抗野球の準決勝・東京都(東京ガス)戦で、2点二塁打を放つ東京都(NTT東日本)の上川畑大悟選手=東京ドームで津村豊和撮影

 社会人3年目。上川畑選手は打撃フォームを試行錯誤し、前傾気味の構えに落ち着いた。前に体重をかけることで、体が開かずスムーズにバットが出てくるようになった。「長打もホームランも出るようになった」と手応えをつかみ、ドラフト指名を勝ち取った。

 プロでも当初は投手の精密なコントロールや球速に苦しんだが、少しずつ照準を合わせてきた。「どうしてもインコースを攻められる。そこにどう対応していくかという時に、引っ張り気味でいかないといけない」と上川畑選手は話す。3年目の今季はけがの影響で開幕にやや出遅れたが、前半戦を終えて63試合に出場、打率2割4分5厘とまずまずの数字を残している。

 オールスターは存在感を示す絶好の機会だ。飯塚さんによると、プロ入り時に周囲では下位指名を心配する声もあった。しかし、NTT東日本出身のオリックス・福田周平選手(31)から「プロに入れば横一線。絶対にプロに行った方がいいですよ」と話があったという。その助言を飯塚さんから聞いたという上川畑選手は1年目から80試合に出場。今季は球宴の大舞台までたどりついた。

 第1戦は昨年開業した本拠地で行われる。「数多くのスター選手が出場してきた舞台に立てる。楽しんでプレーしたい」と上川畑選手は意気込む。過去2年間は年間通じてのレギュラーには定着できなかっただけに、今年は「3年目の正直」を期すシーズンだ。初のオールスターはさらなる飛躍へのステップとなる。【石川裕士、岸本悠】

上川畑大悟(かみかわばた・だいご)

 岡山県出身。岡山・倉敷商高、日大を経て、NTT東日本で3年間プレー。2022年にドラフト9位で日本ハムに入団した。

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