(21日、第106回全国高校野球選手権滋賀大会3回戦、綾羽4―1八幡商)
3点を追う八幡商は九回、1死一、二塁の好機をつくった。だが、ショートライナーで、飛び出した二塁走者も戻れずに併殺。負けが決まった。
その瞬間、三塁コーチスボックスの安田仁之介主将(3年)は、ひざからくずおれた。しばらく、立てなかった。
仲間を鼓舞するチームの精神的支柱だ。
先発した田上航投手(同)とは大津市立日吉中学校時代にバッテリーを組んだ。中学最後の夏、県大会で優勝し、近畿大会で準優勝。「2人で甲子園に行こう」。公立校で出場することをめざして、八幡商に入った。
昨夏の滋賀大会に続き、昨秋、今春と4強入り。総合力の高いチームで、今大会はシード校だ。「今年がチャンス」と、2011年の第93回大会以来の優勝を狙った。
この日の田上投手は140キロ超の直球を軸に力投したが、スクイズを決められるなど4回で3失点。安田主将は、伝令でマウンドに行くたびに「全部出し切ってこい」と声をかけ続けた。
試合終了後、立ち上がった安田主将に寄り添ったのは田上投手だった。
「田上の投げる姿が見られてよかった。力を全部出し切ってくれた」
スタメンには2年生が4人入っていた。「僕たちの気持ちを受け継いで、甲子園に行ってほしい」。ふたりの夢は後輩に託した。(仲程雄平)
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