(21日 第106回全国高校野球選手権東東京大会5回戦 修徳4―3小山台)
手に汗握る好ゲームを分けたのは、タイブレークの攻防だった。
十回表、小山台の先頭は捕手・岩藤隆汰(3年)。この日、本塁打を含む長打2本を放っていたが、サインは送りバントだった。「うちは全員が長打を打てるチーム。練習通り決めた」。セオリー通りに1死二、三塁として、1点を勝ち越した。同点に追いつかれた十一回表もバントで1死二、三塁のかたちをつくった。が、満塁からの強攻策が併殺打となり、無失点に終わる。
今夏の東・西東京大会あわせて14試合(20日まで)がタイブレークとなり、先攻が8勝、後攻6勝。回の先頭が犠打を試みる戦法は6割超に上った。十一回裏の修徳も先頭がバント。それが安打となり、小山台は無死満塁のピンチを招く。「1点取られたら負け」という状況が、岩藤に焦りを生んだ。
内野ゴロを打たせ、本塁で一つアウトを取った後、三塁をオーバーランする走者が視界に入った。
高校入学時は遊撃手だった。肩に自信があった。「刺せる」と思ったが、送球は三塁手の右上にそれ、サヨナラとなる走者の生還を許した。
先発した高橋昊汰(3年)とのバッテリーはこの日、強豪相手に冷静かつ柔軟だった。内角攻めで詰まらせる配球で臨んだが初回に2失点。直後に配球を外角中心に変更し、内角は見せ球に。12の内野ゴロアウトを積み上げた。
「盗塁をほとんど刺してくれた。ホームランも打ってくれた。こんなキャッチャーはいない」
高橋は岩藤をそうねぎらった。
都立高として東西大会で唯一勝ち残っていた小山台の夏が終わった。
「守りを早く終わらせたくて。味方にとって予想外のプレーをしてしまった」
試合直後、岩藤はなかなか立ち上がることができなかった。それでも、攻守で輝きを放ったチームの大黒柱に、スタンドを埋めた応援団の拍手は鳴りやまなかった。=神宮(中村英一郎)
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