(18日、第106回全国高校野球選手権西東京大会4回戦 早大学院10―0保谷 六回コールド)

 保谷の阿出川祐矢(3年)は昨秋、主将の座を失った。奮起して、磨いた守備で高校生活最後となった夏の大会、チームに貢献した。

 昨夏の大会後、思い切って主将に立候補した。下級生の時から試合経験が豊富で、「チームを引っ張らなきゃ」と思った。仲間も大平一郎監督も認めてくれた。

 だが、うまくいかないことばかりだった。練習試合で負けが続いたり、後輩への接し方を巡って同級生とぶつかったり。チームのことを考えると、不安で眠れなくなった。

 不安はプレーにも表れる。打席で考えすぎて、甘い球に手が出なくなった。そんな阿出川の様子を見ていた大平監督から昨秋、「主将を代える」と告げられた。

 「失格だ」と落ち込んだ。でも、野球は大好きで、素直に受け入れた。自分のプレーに集中しつつ、チームのためにできることを考えた。

 内外野どこでも守れる器用さを、チームのために生かそうと練習に励んだ。新主将の捕手、鈴木結真(3年)の負担を少しでも減らすため、細身の体で捕手の練習にも挑戦した。

 今夏の大会、3回戦では三塁から左翼へ。18日の早大学院戦では右翼から三塁へと守備位置を変え、無失策でチームをもり立てた。だが、打線がふるわず、敗れた。

 試合後、この3年間を振り返ると涙で言葉に詰まった。「すみません、今は言葉にできなくて……」。そんな阿出川を見ていた大平監督はこうねぎらった。「のびのびプレーさせたくて主将を代えたんです。でも、ちょっと厳しく言い過ぎたかな。阿出川は優しくて、能力も高い」。最後に監督から出たのは、評価する言葉だった。=S&D昭島(吉村駿)

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