(17日、第106回全国高校野球選手権兵庫大会3回戦 県伊丹4―9須磨翔風)

 5点リードされて九回2死走者なし。自分が最後の打者になるかもしれない、緊張する場面で打席に立った県伊丹の1番打者・和田将弥選手(3年)は、にこにこしていた。「2回戦のように、また逆転できる」

 15日の2回戦。県尼崎を相手に2―3で九回2死三塁まで追い込まれた。だがそこから4連打で3点を返し逆転勝ち。自身も同点のホームを踏んだ。

 大会直前は打撃の調子を落としていた。「打つときに力が入ってしまう。脱力して打てば、復調するのではないか」

 リラックスするために編み出したのが、にこにこと笑顔で打席に入ることだった。

 この打席も笑顔でバットを構えた。直球を狙い、3本目の安打を放った。「ここから逆転してくれるはずだ」。そう信じたが、次の打者が打ち取られ、試合が終わった。

 この日の相手は春の近畿大会4強で、優勝候補の一角の須磨翔風。第1打席では、初球の直球を二塁打に。先制のホームを踏んだ。「この流れなら勝てる」

 五回も2死二塁の好機で、狙っていた直球を左前安打にしたが、二塁走者が本塁で刺された。中盤に2点差まで追い上げる粘りを見せたが、終盤に引き離され敗れた。

 「途中までいい試合だったのに悔しい。でもチームが一丸になって、力を出し切ることができた。自分も笑顔のおかげで3安打できて良かったです」。試合後、晴れ晴れとした表情を浮かべた。

 もう野球は続けず、今後は医療系の大学に進んで、困った人の役に立ちたいとの思いから、看護師を目指すつもりだ。

 「次は患者さんに笑顔になってもらえるように」。そう願って。(森直由)

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