世界ラート競技選手権大会に出場する日本代表の高橋靖彦(左)と塚田怜奈=東京都港区芝浦1の港区スポーツセンターセンターで2024年6月23日、庭木茂視撮影

 金属製の二つの大きな輪を平行につないだ器具を操り、回転したり跳躍したりして技の難易度や完成度を競うドイツ発祥の「ラート」。オランダで28日に開幕する世界選手権に、個人総合優勝3回の高橋靖彦(39)=秋田ノーザンハピネッツ(NH)=と、秋田県でその指導を受ける高校1年、塚田怜奈(15)らが出場する。地域に根ざした競技の普及強化の取り組みから、若い世代が世界の舞台に立つ。

 ラートの競技は、両輪を床につけて回転する「直転」▽片輪だけを床につけ、斜めに回転する「斜転」▽回転させた器具に飛び乗ったり宙返りやひねりを加えて飛び降りたりする「跳躍」――の3種目がある。力強さと美しさを兼ね備えた器械体操の一種といえる。

壮行会で「斜転」の演技を披露する高橋靖彦=東京都港区芝浦1の港区スポーツセンターで2024年6月23日、庭木茂視撮影

 日本ラート協会によると競技人口は世界で1万人。国内は約500人だが選手は世界トップレベルの実力がある。同時に、回転感覚を手軽に味わえ、大人も子どもも楽しめる生涯スポーツでもある。

 秋田県仙北市出身の高橋は筑波大時代にラートを始め、日本選手権個人総合を10連覇中。2年ごとに開かれる世界選手権個人戦での総合優勝3回は歴代最多となっている。

 これに注目したのが、男子プロバスケットボールBリーグB1の秋田NHだった。2018年に高橋を社員に招き、23年からはプロ契約をして国内外での活躍を支えると共に、ラートスクールを開催して競技普及と選手の発掘・育成に力を入れている。スクール参加者は小学生から60代までと幅広い。

 さらにバスケの試合前に高橋が演技を披露したり、保育園や学校、地域イベントなどに「器具」を持ち込んで体験してもらったりして、秋田県内での競技認知度は高い。

 女子ジュニアの塚田は秋田市出身・在住。小学5年生からスクールに通い、高橋の指導を受けて技を磨いてきた。23年12月の日本選手権でジュニア部門の上位に入り、代表の座をつかんだ。

 高橋は「一つアドバイスを伝えると5以上の演技になって返してくれる。自分でかみ砕いて理解しようと競技に向き合う姿勢が素晴らしい」と期待を寄せる。

高橋靖彦の「直転」の演技=東京都港区芝浦1の港区スポーツセンターで2024年6月23日、庭木茂視撮影

 世界選手権の日本代表選手は15人。6月23日に東京都港区で開かれた壮行会で、高橋は斜転と直転、塚田が直転と跳躍の演技を披露した。

 22年の前回大会で総合準優勝だった高橋は「多くの方々、特に秋田の皆さんから応援で力をもらっている。いい結果を秋田に持ち帰りたい」と話す。初めて日本代表に選出された塚田は「自分の納得のできる演技を、楽しんで披露したい」と意気込んだ。

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 世界選手権の選手・コーチ、審判員計21人は渡航・滞在費や大会参加費などがすべて自己負担。1人40万~50万円に上り、協会は「支援金」への協力を呼びかけている。1口5000円の返礼品なしコースと、Tシャツやフェースタオルなどの返礼品がある1000円から2万円までのコースがある。募集は31日まで。詳細は協会の「2024ラート競技日本代表選手団情報」のサイトに掲載している。【庭木茂視】

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