(16日、第106回全国高校野球選手権西東京大会3回戦 佼成学園6―4昭和)
昭和の二遊間が、あうんの呼吸で球場を沸かせた。
二回裏1死、二遊間にぼてぼてのゴロが飛んでくる。なんとか打球に追いついた二塁手の原拓未(3年)は、二塁ベース付近でグラブを構える後輩の塚本凌大(2年)の姿が目に入った。
降り続く雨でぬかるむグラウンド。「踏ん張って一塁に送球するのは難しい。アウトにできないと思って、塚本に託してみた」。遊撃手の塚本にグラブでトス。一瞬の判断だった。
受けた塚本は、「特に原さんから声かけはなかったけど、自然と体が反応した」。受けたトスを素早く一塁へ送球しアウト。華麗な連係プレーに、佼成学園のスタンドですら、「えぐい!」とどよめいた。
昭和の大原博文監督が「見事なプレー」と言って例えたのが、「アライバ」だ。アライバとは、プロ野球・中日でかつて二遊間を守っていた荒木雅博と井端弘和のコンビのこと。息ぴったりのグラブトスで球場を沸かせ、「伝説の二遊間」として今も野球ファンの記憶に残る。
今春から二遊間を組み始めた原と塚本も、アライバに憧れていた。2000年代に活躍した現役時代はあまり記憶にないが、動画投稿サイトでアライバの守備を見て、「いつか試合でグラブトスをやりたいね」と話したことがあったという。
ただ、チームの方針は、投手を中心に守り勝つ野球。基本に忠実なプレーが求められるため、派手ともいえるグラブトスは、「やろうと思ったことすらなかった」と2人は口をそろえる。大原監督も「教えたことはないです」。
試合に敗れたが、大舞台で憧れのプレーをやってのけた2人。「球場のどよめきが最高でした。やってやりましたよ」と原が言えば、塚本は「守備がうまい原さんとだからできたプレー。あの瞬間はずっと忘れられない」。2人はすがすがしい表情で球場を後にした。=コトブキヤ(吉村駿)
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