(14日、第106回全国高校野球選手権宮城大会2回戦、石巻西8―仙台東9)

 「緊張するな」「自分のいきたいやついけ」

 1点差に迫った九回、2死二、三塁。ベンチから声をかけられながら打席に立ったのは石巻西の今野大登(だいと)選手(2年)。

 「仲間のためにつなげたい」という思いでフルカウントまで粘った8球目。仙台東の渡辺吏(つかさ)投手(3年)のカーブにバットが空を切った。

 仙台東のベンチから笑顔の選手が飛び出してくる中、悔しさがこみ上げ、バットの先を頭上から地面に振り下ろした。

 今野選手は小学生のときは軟式野球をやっていたが、中学でテニス部に。一時、野球から離れた。高校で「もう一度野球をしたい」と、野球部に入った。

 3年生の先輩は、野球部出身でない自分にも分け隔てなく接してくれた。冬にはチーム全体で筋トレや走り込み、バント練習に取り組んだ。誰がバッターボックスに立っても打てるチームづくりを目指してきた。

 試合後、「野球は1球で(状況が)変わるのが悲しい」と悔しい場面を振り返るも、「野球部を選んでよかった」と言い切った。少し潤んだ目で「すごく楽しい2年間で、先輩には感謝しかない」と話した。(岸めぐみ)

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