(14日、第106回全国高校野球選手権茨城大会2回戦 藤代4―3明秀日立)
1点差に迫った九回裏2死。次打者席にいた明秀日立の主将・明石新之助(3年)は、ベンチに向かって何度も笑っていた。
「ベンチの3年生が『明石まで回せ』と言ってくれたから」
1年前の夏。準決勝で霞ケ浦に2―4で敗れた。最後は明石の外野フライで試合終了。「次打者の3年生に回せなかったのが悔しくて」。帰りのバスの中まで泣き続けた。当時の主将は「お前らの代で甲子園に行け」と言ってくれた。
新チームで主将になった。だがチームは昨秋、今春と、求める結果が出なかった。チームをまとめきれず、練習場で泣いたこともある。
ノーシードで迎えた夏。この日、ピンチのたびに捕手としてマウンドに行った。「自信持って腕振ってミット向かって投げてこい」。投手陣の出来は悪くなかったと思う。ただ、「チームとして公式戦の経験が少なかった」と振り返った。
試合は最後、2年生の三番打者が外野フライに倒れ、打席は回ってこなかった。その瞬間、笑顔で天を仰いだ主将に、最後まで涙はなかった。(北上田剛)
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