次女真衣さんと練習していた自作のバスケットゴール。鈴木典行さんは練習や試合で使用したボールも大切に保管している=宮城県石巻市で2024年5月19日、和田大典撮影

 パリ・オリンピック開幕まで半月を切り、フランス国内では聖火リレーが続いている。

 「真衣と一緒に走れてよかった」。3年前を振り返るのは、東日本大震災で次女真衣さん(当時12歳)を亡くした宮城県石巻市の鈴木典行さん(59)。真衣さんが通っていた大川小では津波で児童74人、教職員10人が犠牲になった。

 2021年の東京大会では聖火ランナーを務めた。石巻市内を走り、ポケットには真衣さんの名札を忍ばせた。リレー後、コースに入らなかった同小に移動。亡き子どもたちにトーチを掲げた。

 真衣さんはミニバスケットボールチームに所属。鈴木さんはチームのコーチを務め、試合では審判として真衣さんと同じコートを走った。家にはシュート練習用に自作したゴールが今も残る。「真衣とのミニバスが私のバスケのすべて。ここは真衣と一緒にいられる場所なんです」

 以前はテレビでバスケットボールの話題を見るのもつらい時期があったという。でも、今は「何を見ても、何を思い出しても受け入れて、当時のこと全てに向き合う覚悟」と話し、大川小で語り部を続けている。

 日本代表はパリ五輪で男女ともに出場する。「今回は自力で出ることになったので1試合でも勝ってほしい。個人的には審判の動きを見るのも楽しみ」と笑顔を見せた。

 東京五輪では女子が銀メダルを獲得。男子が五輪出場権を獲得した昨年のワールドカップは大きな話題となり、Bリーグなど国内リーグも盛り上がりを見せる。前回大会で初採用された3人制も各地で専用コートが設けられ、国際大会誘致や交流拠点として地域活性化につなげる取り組みが広がっている。

 笑顔で集い、垣根を越え、夢を追う。リングの下にはそれぞれの思いがある。各地のコートを巡った。【和田大典】

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