(第106回全国高校野球選手権東・西東京大会)

 1、2、3、4、5……。赤いボタンを押して、心の中でカウントする。この試合も無事に終わりますように――。試合開始のサイレンが、神宮のグラウンドに鳴り響いた。

 帝京3年の佐々木陽葵(ひなた)さんと永野彩依(あい)さんは神宮でアナウンスを担当する。試合前練習の呼びかけや選手名の読み上げなど、仕事は盛りだくさんだ。

 高校進学後、帝京中時代のバレーボール部の先輩から誘われ、2人でアナウンスを始めた。中学3年間はコロナ禍まっただ中。永野さんは「どうせなら、やったことのない新しいことに挑戦しようと思って」。

 ダンス部と両立しながらアナウンスを続けた。神宮でのアナウンスは、今年で3年目だ。

 2人にとっても最後の夏。開会式では、帝京の同級生が、力強く選手宣誓をした。学校で見る姿とは違って頼もしく、かっこよかった。アナウンスをやっていなかったら、こんなに高校野球に関わることもなかっただろうな。

 試合終了のサイレンを押す。佐々木さんは「これで高校野球が終わるチームと、まだ続けられチームが目の前にいる。複雑だけど、どっちも頑張ったなって思う」。

 同い年の選手たちに刺激をもらう日々。あともう少し、グラウンドに近い特等席で、活躍を見届けよう。=神宮(野田枝里子)

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