(9日、第106回全国高校野球選手権茨城大会1回戦 清真学園8―0土浦工、7回コールド)

 「誇れる仲間との最高の時間でした」

 試合後、ベンチ裏で目に涙を浮かべながら、土浦工主将の山口泰人、エースの渡辺心輝、マネジャーの諏訪楓の3年生3人は、口をそろえた。

 昨夏の茨城大会に単独で出場していた土浦工。昨秋、新チームになって選手は山口、渡辺のほか、1学年下には3人しかいなかった。秋、春は他校との連合チームで県大会に出場した。

 「渡辺はムードメーカーで、諏訪さんは周囲にいつも気を配って支えてくれた」と山口。それでも平日の放課後は部員が少なく、週末に他校と合同練習するのが「野球部らしくできる、数少ない日だった」。

 4月に1年生17人が入部した。中学での軟式経験者も多かったが、硬式は初めて。5月、学校で2泊3日の緊急合宿をした。

 夏の開幕までは、あとわずか。山口たちは厳しく指導した。それでも誰一人欠けることなく、単独出場の願いがこの夏、叶った。

 この日、土浦工は清真学園に2点を先行されるが、山口、渡辺のバッテリーを軸に粘る。諏訪もベンチで選手たちに声をかけ、励ました。

 四回は2死満塁、五回は山口、渡辺の安打で2死一、三塁の好機を作ったが、得点には届かなかった。

 七回、内野を守る1年生たちの経験不足をつくように内野にボールを転がされた。四つの内野安打を絡めて、6点を失った。

 「負けて悔しいが、後輩たちに『ありがとう』って言いたい」。目を赤くしながらも試合後、3人はやり切った笑顔を浮かべた。(古庄暢)

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