(9日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 正則学園6―7郁文館)
「なんとか最少失点で抑えてくれ」
七回裏、正則学園の記録員の加藤文都(ふみと)(3年)は、ベンチで固唾を飲んで試合を見守っていた。チームはこの回表、郁文館から3点を奪い、6―3と逆転に成功していた。
あと3回。「流れをつかんだ」と思った直後、連打を浴びた。願いは届かず、あっという間に4点を奪われ、試合をひっくり返された。「切り替えて八回の攻撃につなげよう」。スコアブックに記録をつけながら、必死に仲間に呼びかけた。
今春、控え選手からマネジャーに転向した。左ひざをけがし、十分に練習ができなくなり、他の選手と差が開くのを感じた。今春の都大会後の4月、国島一平監督に「選手をサポートしたい」と打ち明けると、マネジャーを打診された。
裏方の仕事は、思っていたよりも自分に合っていた。道具の準備などでチームメートに感謝されると、うれしかった。スコアの書き方も、苦労したが、書店で買った本やプロ野球の試合中継を見て、一から覚えた。
記録員として迎えた最後の夏。制服姿でベンチから大きな声で、チームを鼓舞した。タイムリーを打った選手には「ナイスバッティング!」。打者が空振りをしたり、投手が四球を出したりした時は、いっそう声を張り上げた。
だが、及ばなかった。最後の打者が打ち取られると、悔しそうな表情で記録をつけた。
負けたことに変わりはないい。でも、選手ではない立場で仲間を見てきたからこそ、胸を張って言える。間違いなく今日の試合も、仲間たちは全力だった。「みんなの姿を最後まで見届けられて、楽しかった。ナイスプレーと伝えたい」=神宮(佐野楓)
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