6日に開幕する全国高校野球選手権西東京大会で、都立青鳥(せいちょう)特別支援学校(世田谷区)が特別支援学校として全国で初めて、単独チームで出場する。全員に知的障害があり、筋力が衰える病気や低血糖の選手もいる。出場までの壁をチームワークで乗り越えてきたナインは7日、全力で初戦に臨む。(昆野夏子)

◆昨年は他校との連合チームで挑戦、2選手がプレー

打撃練習をする部員たち

 「お願いします!」。狭いグラウンドに、選手たちの声が響く。試合を想定した守備練習。2死なのに併殺を狙ったり、走者の盗塁に気付かなかったり。どこに投げて良いか分からず、戸惑う場面も。定位置を何度言っても忘れてしまう選手もいる。  ノックを打つ水野亮助監督(34)が繰り返し、辛抱強く教える。「守備は周りがしっかり声出して教えてあげて」「仲間がミスしたら励まそうぜ」  昨年5月に都高野連への加盟が認められた。昨夏、普通科高校2校との連合チームで初出場した。

キャッチボールをする部員たち

 しかし、試合に出場できた同校の選手は2人だけ。久保田浩司監督(58)は「学校が単独で出れば、選手の出場機会が増える。一人でも多く試合を経験させたい」と考えた。

◆「ここで野球をやりたい」…集まった選手たちが成長

 今春、新入生6人が入部した。昨夏の出場を見て「野球がやりたかったけど他の学校では断られた」「ここで野球をやりたい」。部員は12人になり、単独出場が可能になった。練習は週3〜4日。技術が少しずつ上達し、それ以上に成長したのは内面だった。

練習で笑顔を見せる部員たち

 エースの首藤理仁(りひと)投手(3年)は会話が苦手で、頭に言葉が浮かんでも、うまく表現できずに押し黙ってしまうことも多かった。後輩の面倒を見るうちに、上級生の自覚が芽生えた。後輩の新品のスパイクに靴ひもを通しながら「みんなで野球やるの、楽しいよね。声を出しながら、いいチームをつくっていきたい」とはにかむ。

◆白子悠樹主将は可能性を信じて「まずは今年、全力で」

 白子悠樹主将(同)は手足の筋力が徐々に衰える難病で、出場機会は多くない。それでも小遣いをためて硬式グラブを買い、病気を言い訳にせず、練習に励んだ。精神的支柱となり、仲間たちの相談に乗る。

活動に賛同した企業が寄付してくれた打撃ゲージで練習する部員ら

 「病気や障害があっても、野球がうまい子はたくさんいる。そういう子たちが集まったら、うちも甲子園にいつか行けるかもしれない。可能性は1%くらいならある。まずは今年、全力で頑張るしかないです」 

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