人口減ニッポン 高校野球の今③群馬・健大高崎

 6月中旬、健大高崎(群馬)のグラウンドでは、内野陣が懸命に白球を追っていた。

 ただ、そこには今春の選抜大会で優勝したメンバー、二塁手の高山裕次郎や遊撃手の田中陽翔らの姿はない。ノックを受けているのは「Bチーム」「Cチーム」に区分けされる下級生中心のメンバー。主力組のAチームは外野でキャッチボールをしていた。

 「練習を平等に」が青柳博文監督(52)の方針だ。選手は3学年で計88人。当然、全員が公式戦のベンチに入れるわけではない。だが、野球をするのはレギュラーだけで「補欠」は練習補助だけ、という状況は夏の大会前でも作らない。

 「主力(A)」「育成(B)」「新人(C)」の3チームがグラウンドや室内練習場などに分散してそれぞれがめいっぱい練習する。雑用も1年生だけでやることはない。

 B、Cチームを指導するOBの小谷魁星コーチ(26)は「みんなが健大に来てよかったと思えるチームを目指している」と話す。「野球はマウンドや打席でスポットライトを浴びる競技。少しでも多くその機会を作りたい」

 健大高崎の特徴は、練習試合の多さだ。毎週末、3チーム全ての練習試合を組む。たとえばBチームで土曜日に活躍すれば、翌日にAの試合に呼ばれることもある。

 3年生の右投手、関口圭佑は、入学から1年間はCチームだった。練習試合で苦手のスライダーを試行錯誤。今では武器となり、選抜では初めてベンチ入りした。「打者の反応は実戦じゃないとわからない。試合があるからCチームでもモチベーションを保てたし、色々と挑戦もできた」

 2年生でBチームの外野手・高須賀天丸(そらまる)は夏以降を見据えている。「足の速さは学年でも上位。バントとか足をいかせる小技を磨いて、新チームではベンチ入りしたい」と意気込む。

 県外出身者が多いことを揶揄(やゆ)して「県外高崎」と呼ばれることもあった。今も北は北海道から南は宮崎まで全国各地から集う。「半数以上が県外生。彼らは『親にお金をかけてもらっているからひと花咲かせてやろう』という意識がある。県内出身者も負けられないと相乗効果が生まれる」と青柳監督。

 野球留学についても持論がある。「行きたい学校を選ぶのは普通のこと。大学もそうでしょ。だから論議するのはそもそもどうなのかと思う」

 選抜で1番打者として活躍した斎藤銀乃助は福島県出身。中学時代に関東のチームと対戦し、レベルの高さに驚き、高校は関東でと決意した。「強いところで、自分も引っ張られて自然とうまくなれる。健大は1年から試合で学ぶ機会がある。毎週、課題を見つけて克服できるのも自分たちの強み」

 全国的に部員不足に悩むチームが増える一方、日本高校野球連盟と朝日新聞社の調査では、部員80人以上の学校もこの四半世紀で100以上増えるなど、「二極化」が進む。一人ひとりの満足度をいかに高められるかは、大所帯なりの課題。健大高崎は毎年、退部者がほとんどいない。(大坂尚子)

部員数が10人未満の学校と80人以上の学校数

        10人未満   80人以上

1998年度(第80回)  97   68

2003年度(第85回)  97   101

 08年度(第90回)  107   168

 13年度(第95回)  140   235

 18年度(第100回) 309   259

 23年度(第105回) 509   187

※日本高校野球連盟と朝日新聞社が5年に1度実施している高校野球実態調査から。カッコ内は大会回数

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