野球人口が減る中、高校野球で増えているのが部員不足のチームを救済する「連合チーム」です。9人に満たない数チームが集まって人数をそろえ、大会に参加します。全国で増加傾向ですが、現状はどうなっているのか。僕の故郷・群馬の連合チームに、前々から会いたかった人を訪ねました。
藤岡市の神流川河川敷にある藤岡工のグラウンドで迎えてくれたのは、下仁田の田部井雅行監督(36)。今夏の群馬大会に榛名・下仁田・藤崎工の連合チームで出場します。連合ではコーチ。実は、僕とは保育園から中学まで一緒だった幼なじみで、少年野球や部活のチームメートでもあります。お互いの実家は約100メートルの距離で、よくキャッチボールなどもしましたよ。
田部井監督は、7年前に下仁田に赴任した当時から野球部の人数が足りず、他校に電話をかけて連合相手を探したそうです。「野球好きな子が集まっていたので、なんとか大会に出場させてあげたかった」と話します。その後も下仁田は単独出場はなく、様々な高校と連合を組んで大会に出場していますが、勝利は遠いそうです。
今夏は藤岡工8人、榛名5人、下仁田3人の選手と榛名のマネジャー2人で臨みます。平日はそれぞれの学校で個別練習。週末の全体練習で連係プレーなどを確認し、試合もします。
連合チームの監督で藤岡工の下風博之監督(58)は「最初は『寄せ集め』じゃないけど、連合に良いイメージはなかった。でも、やってみたらマイナスは一つもなかった」と話します。
練習を見ると、みんな仲が良い。声かけもスムーズだし、ミスなど指摘するべきところは指摘する。榛名の飯塚知之監督(43)は「生徒たちはすぐに溶け込んだ」。下風監督も「仲間が増えて、元気よく活動ができるようになった」と振り返ります。
そして、指導者が多いのも心強いところ。連合なら各校に監督がいて、ほかに協力してくれる先生もいます。3人の監督は「他の先生の指導方法は勉強になる」と声をそろえます。
課題は「時間」だそうです。お互いに離れているので、土日の全体練習に集まるのにも時間がかかる。平日に連係プレーの確認ができないなど、どうしても時間のロスが生まれます。練習や試合に選手を送り届けるなど、保護者の協力も欠かせません。
選手はどう感じているのか。連合の主将で榛名の関口空主将、藤岡工の岸田悠典主将、下仁田の神戸永遠主将(いずれも3年)は「最初は戸惑ったけど、すぐに慣れた。連合で鍛えられたコミュニケーションの取り方を将来にも生かしたい」。そして、今夏の目標は3勝。その理由は、試合に勝って流れる校歌は1試合につき1校。3勝して連合に参加する3校全ての校歌を流したい、と意気込みます。
僕が高校生の頃は学校単位で大会に出るのが当たり前だと感じていました。でも、取材してみるとイメージが覆りました。ほかのチームと協力することで、普通の高校では経験できない貴重な経験ができている。その経験は、間違いなく将来に生きると思います。
課題である「時間」の問題が解決できれば、連合チームを甲子園で見る日も近いと感じました。そして、いつか甲子園でお会いしましょう。田部井監督!
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