会場はさながら“フェス”のよう

予選シリーズの第2戦の会場となったのは、ブダペストの大学内にある公園や施設でした。

スケートボードとスポーツクライミング、自転車のBMXフリースタイル、そしてパリオリンピックの新競技となるブレイキンの、4つのアーバンスポーツの競技会場が歩いて数分の場所にあり、その途中にはハンガリー料理などの屋台やスケートボードやBMXなどの体験コーナー、そしてパリオリンピックの公式グッズの販売店もありました。

しかも大会会場への入場は無料だったことから、アーバンスポーツのファンだけでなく、ベンチに座ってご飯を食べながら競技を遠巻きに見ている人や、子どもと遊具で遊んだあとに観戦する親子連れなど、それぞれの楽しみ方で過ごしていました。

中には公園内を散策する選手がファンにサインをするといった光景もあり、その自由な雰囲気はさながら“フェス”と呼ばれる野外音楽イベントのようでした。

これまで行われてきたオリンピック出場をかけたスポーツの大会とは大きく異なるものでした。

IOCのねらいは若者の関心

背景には、IOCがオリンピックやスポーツに若者の関心を向けたいというねらいがあります。

アーバンスポーツの世界では、これまでも世界最高峰の大会「Xゲームズ」など、スポーツとイベント要素を組み合わせた大会が行われていて、若者を中心に人気を集めていました。

日本でも2022年に千葉市で「Xゲームズ」が初開催され、多くの若いファンを集めました。

こうした集客力の高いイベントを、オリンピックの出場権をかけた真剣勝負の予選大会と組み合わせることで、新たなスポーツイベントのモデルを生み出そうとしているのです。

IOCのバッハ会長は、第2戦が行われたハンガリーの会場を大会初日に視察し、「スポーツの楽しさ、アーバンスポーツの文化、そして選手たちがオリンピック出場の夢を実現させようとする決意が融合した、とてもいい雰囲気だ」と評価したということです。

選手からも歓迎の声

選手からも歓迎する声が聞かれました。こうしたイベントは競技の盛り上がりにつながるというのです。

自転車BMXフリースタイルの中村輪夢選手は、「お客さんがいろいろな競技を同じ会場で見ることができることもいいですし、僕自身もほかの競技の選手たちと一緒の会場でプレーできるのは刺激をもらえる。もっとこういう大会が増えていったらいいなと思う」と話していました。

スケートボード女子パークの13歳、長谷川瑞穂選手は、「ほかの競技を生で見るのが初めてで、ブレイキンとかすごくかっこいいなって思った。ほかの競技の日本選手と初めてあいさつもできて、楽しかった」と、若い選手にとっては自分の視野を広げる貴重な交流の場にもなっていました。

さまざまなスポーツ集めた予選シリーズ 拡大を検討へ

さまざまなスポーツを集めた予選シリーズを、IOCは今後も拡大させていく方向で検討を進めています。

さらにIOCは、バーチャルスポーツやeスポーツといった若者向けの新たな分野の開拓にも力を入れています。

スポーツに関心を持つ新たな層を開拓するという意味では、一定の成果があった、初めての予選シリーズ。

若者の“スポーツ離れ”や“オリンピック離れ”が指摘される中で、こうした試みが新たなスポーツの魅力を生み出していくきっかけになるという可能性を感じました。

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