高校野球の育成と発展に尽くした人に日本高校野球連盟と朝日新聞社が贈る「育成功労賞」に、和歌山北監督の辻本仁嗣さん(56)が選ばれた。昨夏の選手権和歌山大会では同校初となる準優勝に導いた。

 「私なんか選ばれていいのか」と謙遜する辻本さん。「ただ、生徒に野球の楽しさを伝えられたら、との思いでここまで来た」と振り返る。

 海南時代は内野手。中京大卒業後も社会人チームでプレーしていたが、「いつかは高校野球に携わりたい」という思いが断ち切れず、会社を辞めて教職の道へ。大成(現・海南)の責任教師に就いた2000年から指導者の道を歩み始めた。

 忘れられない試合がある。大成の監督だった05年の87回大会2回戦。序盤から相手の集中打を浴びた大成は、中盤に反撃。2死満塁の好機を迎えた七回に、左前打で二塁走者が本塁に突っ込んだが、アウト。1点及ばず涙をのんだ。

 「進塁一つではない。あと数メートル、あと数十センチ足りないだけでも、負けは負け」

 借りを返す試合は、翌夏の88回大会に巡ってきた。大成の初戦は前年負けた相手。終盤に満塁の危機を2度迎えたが、序盤にあげた1点を守り切った。

 「負けた後、選手には、やり残してきたことを必ず成し遂げよう、と言い続けてきた。選手の成長が見られた」

 選手の成長は、現在指導する和歌山北でも実感できた。昨年の105回大会。開幕試合から登場した和歌山北は、勢いに乗って決勝まで勝ち進んだ。

 いま、球児だけでなく、指導者も育てたいと考えている。「生徒に高校野球の面白さを伝えられる指導者の仲間を、増やしていきたい」(寺沢尚晃)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。