国会で審議中の入管法改正案に盛り込まれた永住許可の取り消し事由を拡大する規定に関し、神奈川県内在住の中国人らでつくる横浜華僑総会(横浜市中区)の曽徳深顧問(84)が30日、参院法務委員会に参考人として出席し、意見陳述した。曽さんは「永住者の生活、人権を脅かす」として規定の削除を求めた。
改正案の規定では在留カードの常時携帯など入管法上の義務違反や、税や保険料を故意に納めない場合なども永住許可取り消しが可能になる。同じく国会審議中の育成就労制度が創設され、永住希望者が増加することを見込んだ対応との見方がある。
この日、曽さんは参院法務委で総会など17の在日中国人団体がとりまとめた改正案に反対する声明文などを紹介した。声明は「日本に長年居住する在日中国人の生活や権利が著しく侵害される」と批判し、永住者への「深刻な差別」と指摘。税金滞納は日本人同様に督促や差し押さえ、行政罰などで対処できると訴えている。
曽さんは1940年の横浜生まれで永住資格を持つ。取材に「少子化が進む中、外国人も安定して住みやすい環境をつくることが日本の国益にもなる」と指摘する。周知も不十分と感じているという。自身が内容を知ったのも地元有志が12日に行った勉強会が初めてだった。「大変だと思い、急いで声明文をまとめた」と憤る。
横浜中華街では説明会も開催されており、29日には約40人が集まった。参加者からは「日本で平穏に暮らしてきたが、代表を選べない国会で自分たちのことが決められてしまうのか」などと懸念の声があがった。日本の入管政策に詳しい駒井知会弁護士は「共生社会とは正反対の排外主義だ」と批判している。
出入国在留管理庁によると、永住資格を持つ外国人は2023年末で89万1569人。国籍別では中国人が最多で33万人を超える。【和田浩明】
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