自民党

 自民党の「サイバーセキュリティーに関するプロジェクトチーム(PT)」は10日、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」(ACD)の早期法整備などを政府に求める提言の原案をまとめた。サイバー攻撃の被害が常に発生していることを踏まえ、「サイバー空間は今や『常時有事』だ」と指摘。「我が国の対策は、いまだ道半ばだ」として、抜本的な対策強化の必要性を強調した。

 政府は2022年末の国家安全保障戦略で、悪用が疑われるサーバーを検知して未然に侵入・無害化するACDの導入を明記した。しかし、憲法が保障する「通信の秘密」や不正アクセス禁止法などとの整合性が課題となっており、具体的な進展がない。

 提言案は「関係者からの危惧や懸念の声はピークに達しつつある。対応が遅れれば、当然それに比例してリスクは高くなる」と、現状の政府対応への不満を表明。そのうえで、法整備を検討する有識者会議の早期開催と法案の早期国会提出を求めた。

 10日にあった党会合で甘利明前幹事長は「『専守防衛』の呪縛にかかり、前に進まないのはダメだ」と述べた。ACDを巡る自民、公明両党の与党協議も始まっておらず、自民からは早期見直しを求める声がさらに強まりそうだ。

 提言案はほかに、中国が偽情報を含めサイバー空間でも圧力をかけている台湾との連携を重視。台湾との窓口機関である日本台湾交流協会を通じて、知見の共有を強化すべきだとも明記した。悪意のあるハッカーに対抗する、いわゆる「ホワイトハッカー」を育成し、人材情報を蓄積する「サイバーガーディアンリーグ(仮称)」の創設も盛り込んだ。

 サイバー脅威の早期探知には民間との迅速な情報共有が不可欠だ。このため、官民連携のための「新組織創設も含めた仕組みのあり方を検討すべきだ」とも提案した。【池田直】

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