立憲民主党など野党各党は20日の衆院予算委員会理事懇談会で、自民党派閥裏金事件を巡る真相究明のため、旧安倍派の元会計責任者の参考人招致を要求した。衆院政治倫理審査会では、19日に裏金議員らの弁明が終わったものの、元会計責任者の公判証言との食い違いなどが解消されていないためだ。与党が反対して継続協議となったが、立憲の安住淳予算委員長は合意に至らない場合、自らが判断する考えを示しており、水面下での攻防が本格化しそうだ。
「政倫審で虚偽の説明をしている議員がいる可能性がある。参考人招致を早急に実施すべきだ」
20日の予算委理事懇で、立憲の山井和則氏は与党側にこう迫り、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、共産党とともに参考人招致を要求した。
これに対し、与党側は「民間人の招致は慎重にすべきだ。既に(元会計責任者の)判決は確定しており、司法権との関係でも望ましくない」などと反論。野党側は「このままでは国会の真相究明に対する怠慢とみなされかねない」と食い下がったが、結論は出ず継続協議となった。
野党側が問題視するのは、旧安倍派でいったん廃止が決まったパーティー券収入のキックバック(還流)について、再開を協議したとされる2022年8月の幹部会合だ。
旧安倍派の座長を務めた塩谷立・元文部科学相は24年3月の政倫審で、この会合について「還流の継続でしょうがないかな」という結論になったとの認識を示したが、会合に出席した他の幹部は「結論は出なかった」と口をそろえ、真相は分からずじまいだった。
ところが、元会計責任者は6月、東京地裁で開かれた自らの公判で、この会合で還流復活が決まったと証言。立憲の野田佳彦代表は今月5日の衆院予算委で「新しい事実だ」として元会計責任者の参考人招致を求め、安住委員長の下で協議することになった。
参考人招致は憲法が認める国政調査の一つ。証人喚問と異なり、出席は強制されず偽証罪にも問われないが、野党による政権追及の有効な手段となってきた。過去には総務省幹部に対する接待問題で、放送事業会社社長を招致したケースなど民間人が招致されたケースも少なくない。
自公政権下ではこれまで、野党が招致を求めても与党が拒み実現しないケースが大半だったが、衆院選で自民、公明両党は「少数与党」に転落。予算委員長ポストは30年ぶりに野党が握った。参考人招致は全会一致が原則だが、委員長が判断した場合は委員の多数決で招致するかどうかを決められる。
山井氏によると、安住委員長は理事懇で与野党が歩み寄るよう要請した上で、議論が平行線をたどった場合は「遅くても年明けには自分が一つの判断をする」と語ったという。
立憲幹部は「参考人招致を支持する世論が強ければ、どんなに自民が抵抗してもやらないといけないとなる。あとは世論次第だ」とけん制した。自民の閣僚経験者は「全会一致が原則だ。無理筋でも、招致を主張し続けることに立憲側のメリットがあるのだろう」と冷ややかに語った。【池田直、森口沙織】
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一方、裏金事件を巡り、参院政倫審に出席意向を示している22人は20日、公開での審査に応じる意向を示した。これまでは「議員のみによる傍聴」を希望していたが、一転して全面公開での審査を受け入れた。
13人が公開を希望、9人が政倫審幹事会の決定に委ねる意向を示しており、いずれも全面公開での審査となる見通し。既に公開を希望していた衛藤晟一氏は23日に、22人のうち4人は25日に審査を実施する。【小田中大、竹内望】
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