自民党は旧派閥の政治資金問題の早期収拾へ衆参両院の政治倫理審査会で疑惑がある議員の弁明の場を年内に設けるよう急ぐ。自民党は11日、衆院政倫審の与野党筆頭幹事の協議で10人以上の議員が出席する意向だと伝えた。与野党は12日に出席の申し出を受け改めて議論する方針だ。

与党筆頭幹事を務める自民党の村井英樹氏は終了後、弁明する議員が12日までに衆院政倫審の田中和徳会長に「申し出書」を出す予定だと記者団に説明した。今国会中に審査を開くよう求めていく姿勢を示した。

野党筆頭幹事の立憲民主党の寺田学氏は村井氏に「申し出書が出されたら手続きを進める」と答えた。

今回野党が弁明の対象だと主張したのは政治資金収支報告書への不記載の疑惑がありながら政倫審に出てこなかった15人の議員だ。衆院政倫審は2〜3月に当時の岸田文雄首相(自民党総裁)や旧安倍、二階両派の幹部らが出席した。

自民党の森山裕幹事長は5日に国会内で萩生田光一元政調会長と会った。政倫審への出席を巡り意見を交わした。萩生田氏は同日に旧安倍派で不記載があった議員とも対応を協議していた。

旧安倍派には通常国会で衆院政倫審の開催が取り沙汰された時期に党幹部がとった方針への不満がくすぶる。

当時、党総務会長だった森山氏は萩生田氏に出席は派閥の事務総長経験者に限定すると伝えた。10月の衆院選で落選した前議員の中からも党幹部に政倫審への出席を控えるよう指示を受けたとの指摘が出る。

先行して政倫審の開催に向けた調整を進める参院は公開の是非を巡り与野党の主張に隔たりがある。

参院は旧安倍派の27人が政倫審での弁明を申し出る。自民党の石井準一、立民の斎藤嘉隆両参院国会対策委員長は11日、国会内で会談し、今国会の会期中に参院政倫審の開催を目指す認識で一致した。石井氏は18日か20日に開くことを提案した。

参院は23人が非公開を要望する。今国会会期中の参院政倫審は公開での開催を主張する2人と幹事会の対応に委ねると答えた2人の計4人の弁明を優先する。

2025年夏に参院選や東京都議選を控えるため、自民党は23年末から続く政治資金問題の早期の幕引きをはかる。10月の衆院選で不記載議員に対する党本部の公認判断や非公認候補が代表を務める支部への2000万円支給が批判を受けた。

党内に「政治とカネ」の問題の決着がつかず野党から批判が続く構図への危機感がある。「(25年3月の)党大会までに全部決着をつけないと参院選もダメになる」との意見があがる。

石破茂首相(党総裁)は3日の参院本会議で、参院選の公認・非公認の判断の方針を衆院選と変えることは想定していないとの認識を示した。

政治資金問題が長引くと国会運営に支障が出る。立民の野田佳彦代表らは5日の衆院予算委で、旧安倍、二階両派の元会計責任者らを参考人招致するよう要求した。同委の理事会で引き続き協議する事項となった。

政倫審は国会議員が自らの疑惑を弁明するために審査を開く場となる。開くには①議員本人が申し出る②委員の3分の1以上が申し立て、出席委員の過半数の賛成を得る――の2つの方法がある。

出席は強制できず本人が決める。国政調査権で定める証人喚問と異なり、虚偽の答弁をしても罰則はない。

規定上は原則非公開で「議員その他の者の傍聴」の可否を決める際は弁明する本人の意見を尊重するよう定める。

立民の小川淳也幹事長は10日の記者会見で「堂々と公開の場で説明責任を果たしてほしい」と訴えていた。

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