特撮怪獣映画「ゴジラ」を観光大使に就任させた佐賀県の情報発信プロジェクトについて、県議会から効果を疑問視する意見が出されている。4日の県議会では県議が広告換算額を成果の指標としている点について「効果が人やサービスの流通にどのような影響を与えたか示すべきだ」と指摘し、県民が実感できる目標や効果を提示するよう求めた。
県は2013年度から情報発信プロジェクトを展開。ゲームやアニメなどとのコラボによるプロモーションをしており、23年度は人気漫画シリーズ「島耕作」の主人公、島耕作を副知事に就任させて、県庁に執務室を設けるなどした。
24年度は県の形状と「ほぼ同じ」として、生誕70周年を迎えたゴジラを10月に「かたち観光大使」に任命し、11月から県庁展望ホールにゴジラのフォトスポットを開設。嬉野市の岩屋川内ダムにはゴジラを描いたダムアートを完成させた。
県は事業の成果指標として、メディアのニュースで取り上げられた紙面スペースや秒数などを基に算出した広告換算額を提示。ゴジラのプロジェクトの総事業費は3600万円で目標の広告換算額は3億円を見込む。
これに対し、4日の県議会では自民党の藤木卓一郎県議が「県がコラボ相手のプロモーションをしているのに過ぎないのではないか」と指摘。「人、モノ、サービスの流通やイメージの転換にどのような影響を与えたのかを分かりやすく県民に示すべきだ」とただした。
これに対し、山口祥義知事は「情報発信プロジェクトは県外で発信するだけでなく、県外で話題化したコラボを県内にフィードバックさせて、佐賀県内も盛り上がることをゴールにした。若い人を中心に佐賀ファンを増やしている。巨大ダムアートは地元に大きな波及効果を導いている」と強調した。県によると、23年度までに総事業費約17億円で39件のプロジェクトを実施。広告換算額は約197億円としている。
平尾健・政策部長はゴジラのプロジェクトの広告換算効果が既に6・9億円となり、県庁展望ホールのフォトスポットは来場者が1万人、ダムアートは7000人となっていることを説明し、「地元からも県外から観光客が増えているという実感があるとの声も届いている」と述べた。
一方、藤木県議は民間シンクタンク「ブランド総合研究所」(東京)による24年の都道府県魅力度ランキングで佐賀県が最下位となった点を挙げ、「佐賀県の本質的な魅力を十分に伝え切れていないことを示す結果ではないか」と指摘。山口知事は「ランキングは特に意識していない」と答弁した。
自治体のシティープロモーション事業に詳しい関東学院大学の牧瀬稔教授(行政学)は「批判的な記事の場合は誰も観光に行きたいとは思わないので広告換算でプラスでも実体経済ではマイナスになる」と指摘。佐賀県の人口減を続いている点を挙げつつ、「奇抜なことやってメディアで取り上げられても、その先の定住人口や観光客の拡大につなげられなければ中長期的には衰退してしまう」と話す。【五十嵐隆浩】
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