連合傘下の主要な労働組合や関連政治団体が、自ら擁立・支援する立憲民主党と国民民主党の参院議員に対し、2023年に計約2億4000万円を寄付したことが、29日に総務省が公表した政治資金収支報告書で明らかになった。寄付額は国民民主の議員が計1億6482万円で、立憲議員の計7400万円を上回った。
自民党の「政治とカネ」の問題を受けた政治改革を巡っては、立憲が企業・団体献金の禁止を主張しているのに対し、国民民主は慎重姿勢を示し、野党間で対応が割れている。また、労組による直接寄付ではなく、関連政治団体を通じて寄付した場合は企業・団体献金とみなされず、規制の「抜け道」になるとの指摘も出ている。
連合傘下の労組は、主に官公庁や旧国営企業系が立憲を支援。民間企業系は国民民主を支援するケースが多い。毎日新聞は、主要な労組が「組織内議員」として参院選の比例代表に擁立し、当選した立憲の10人と国民民主の6人が関連する政治団体に対する寄付額を調べた。
国民民主の議員では、トヨタ自動車系労組の政治団体「全トヨタ政治に参加する会」が浜口誠政調会長に計1億円、礒崎哲史副代表に1482万円を寄付した。電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は浜野喜史選対委員長に2000万円、竹詰仁氏に1000万円を寄付。小売りやサービス業などの産業別労組「UAゼンセン」は、川合孝典幹事長代行と田村麻美氏に各1000万円を寄付した。
一方、立憲の議員では、日本郵政グループ労組の政治団体「郵政未来研究会」が小沢雅仁氏に5000万円を寄付。鉄鋼や重工などの産業別労組・基幹労連の政治団体「組織内議員を支援し政策実現を推進する会」は村田享子氏に2000万円を寄付した。この他、NTT労組の政治団体「アピール21」は石橋通宏氏に300万円、私鉄総連の政治団体「私鉄交通政策研究会」は森屋隆氏に100万円をそれぞれ寄付した。他の6人は労組や関連政治団体からの献金はなかった。
組織内議員への献金は、労組が直接寄付するより労組系の政治団体を通じて寄付するケースが多い。政治資金規正法は、労組を含む企業・団体献金について、政党(支部を含む)や政党が指定する政治資金団体のみを対象として認め、年間上限額は資本金などに応じて750万~1億円と定める。
一方、労組系の政治団体を通じて寄付した場合は企業・団体献金とはみなされず、政党や政治資金団体以外の後援会などにも寄付できる。このため、企業・団体献金を禁止したとしても、「抜け道」になり得るとの指摘が国民民主などから出ている。
政治資金に詳しい岩井奉信・日大名誉教授は「政治資金の透明性を高めるためには、企業も労組も寄付の対象は議員個人ではなく、政党本部に集約させるべきだ」と指摘している。【田中裕之】
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