石破茂首相は29日午後の衆院本会議で所信表明演説に臨んだ。所得税の納付が必要になる「年収103万円の壁」の引き上げは「2025年度税制改正で議論し引き上げる」と言明した。22日にまとめた総合経済対策の裏付けとなる24年度補正予算案と政治資金規正法の改正案の早期成立をめざす。
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冒頭の政権運営の基本方針で「国政の大本について常時率直に意見を交わす慣行をつくる」などといった石橋湛山内閣の1957年2月の施政方針演説の一節を取り上げた。
10月の衆院選で自民、公明両党の与党は過半数割れした。野党の協力を得なければ国会では法案が成立しない状況だ。首相は大敗を踏まえ、他党の意見も丁寧に聞くと言及した。「真摯に、そして謙虚に国民の安心と安全を守るべく取り組む」と説明した。
首相は①外交・安全保障②日本全体の活力③治安・防災――の3つを重要政策課題に掲げた。その上で政治改革や憲法改正に取り組む考えを表明する。「全ての国民の幸せを実現する」と唱えた。
総合経済対策を巡っては、自民、公明、国民民主の3党の政調会長が協議を重ね、内容などについて合意した。自公両党は年収103万円の壁の引き上げなど国民民主の政策を受け入れた。
具体的な引き上げ幅や税収減への対応は、25年度税制改正に向けて議論が続いている。首相は税収減への地方の懸念を払拭するため、課題解決への決意を表明した。
国民民主が求めるガソリン減税についても「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と指摘した。
経済は30年ぶりの高い水準の賃上げと過去最大規模の投資の実現で明るい兆しが出ていると指摘した。「コストカットではなく、付加価値の創出に力点を置いた経営・経済への転換を進めなければならない」と説いた。
地方創生には宮崎県小林市など独自の試みを紹介し「これまでの地方創生の成功事例から学び、我が『まち』を輝かせるため共に取り組んでいく」と述べた。新しい地方創生交付金の倍増を前倒しで措置するとも明かした。
防災に関して、避難所設置の国際基準「スフィア基準」を災害発生後すぐに全ての避難所で満たせるよう事前防災を進める。全国の学校体育館のエアコン整備のペースを「2倍に加速する」と述べた。
闇バイトの犯罪グループの検挙にも取り組む。学校での啓発やSNSでの若者向けの情報発信、インターネット上の闇バイト募集の情報削除などを進める。防犯カメラの整備や防犯パトロール用の「青パト」の活動を支援する方針を示し、「町ぐるみの防犯対策をさらに促進する」と強調した。
政治改革は年内に必要な法整備も含めて結論を示すと宣言する。政党が議員に支出する政策活動費の廃止や政治資金をチェックする第三者機関の設置などの議論を進める。「誠心誠意、尽力していく」との姿勢を見せた。
外交に関して「主張すべきことは主張する。その上で協力できる分野では協力する。それが私の考える国益に基づく現実的外交だ」と唱えた。米国のトランプ次期大統領と率直に議論を交わすことで日米同盟をより強固にすると言及した。
首相は15日に訪問先のペルーで中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談した。「かみあった議論を行うことができた」と振り返った。25年1月にも韓国を訪問して尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談する。同年は日韓の国交正常化から60年の節目で、尹氏との間で日韓関係を大いに飛躍する年にすると一致したと説明した。
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