2025年度の税制改正を巡る自民・公明両党と国民民主党の協議が28日、国会内であった。自公側は、所得税がかかり始める「年収103万円の壁」の引き上げを求める国民民主に対し、目的や財源について説明を求めた。国民民主は提示された論点を持ち帰り、次の協議で回答する。与党は年末までに税制改正大綱をとりまとめる考えで、引き上げ幅などを巡り駆け引きが続く。
非公開の協議で自公は、国民民主が所得税の非課税枠を103万円から178万円に引き上げるよう求めていることについて、就業調整対策か、消費活性化のための減税による「手取り増」なのか、生計費への配慮なのかなど目的を明確にするよう要望した。国民民主によると優先順位をつけるよう求められたという。
控除額の引き上げに伴う大幅な税収減を補う策として、自公は▽歳出削減▽経済効果による税収増▽家計の負担増とならない増税――の選択肢を例示。源泉徴収の事務負担などへの影響も尋ねた。公明関係者は「負担があるから責任を持ってくれということだ」と語った。
国民民主はアルバイトで働く学生らを扶養する親の税負担を軽くする「特定扶養控除」の見直しも求めており、自公はその狙いについても協議の中で質問した。
自公は協議で所得減税による経済効果など内閣府の推計を示した。物価変動を含めた名目国内総生産(GDP)1%相当額(6・1兆円)を減税した場合、名目GDPで0・2%(1・3兆円)プラスになる一方、財政赤字の対名目GDP比は一定程度拡大するとした。
ガソリン税の上乗せ分(25・1円)の廃止などを国民民主が求めていることについては、自公は1年先送りするよう求めた。
協議終了後、自民の後藤茂之税調小委員長は記者団に「政策のターゲットが分かれば、どういう手段を講じていくのかにつながる。経済効果による税収は恒久財源にはならない」と述べた。
国民民主の古川元久税調会長は「手取りを増やしていかなければいけない認識は共有できた」と述べた。ガソリン減税については「これからの話。議論していない」と話した。
年収103万円の壁の引き上げはどの水準が適切なのか。国民民主が主張する178万円の根拠は最低賃金の上昇率で、1995年からの上昇率73%と同じ割合の75万円の引き上げを求めている。一方、所得税がかからない103万円の水準は、最低限の生活費に課税しない基礎控除(48万円)と、スーツ代など会社員の経費を差し引く給与所得控除(55万円)の合計で設定されている。
国民民主は基礎控除の引き上げを求めているため、「最低限の生活費」をどう換算するかが論点となる。第一生命経済研究所の試算では、食料品や光熱費など生活必需品を中心とした消費者物価上昇率では128万円、食料品のみの上昇率では140万円になったという。同研究所の星野卓也主席エコノミストは「物価が上がるインフレ経済では、定期的に税制の調整が必要。与野党はその場しのぎの減税策ではなく、将来につながる議論をすべきだ」と指摘する。【杉山雄飛、小田中大、野間口陽、遠藤修平】
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