国と東京電力は、燃料デブリの試験的取り出しが完了した福島第一原子力発電所2号機で、次に投入を予定している大型のロボット(=ロボットアーム)について、ケーブルの経年劣化による断線を確認したことから、これを交換して試験を継続中だと公表した。同じような箇所がないかどうか、どの程度点検するのかは未定で、今後の計画に与える影響の有無は見通せていない。
現在、福島県楢葉町にある施設で動作試験を行っているが、ここに運び込まれる前のイギリスでの試験も含め、5年ほど動作試験を継続している。
一方で、原子力規制委員会は、11月7日に試験的取り出しに成功した「釣り竿型ロボット」での作業継続を提案していて、それより大型になるロボットアームの2号機への投入時期はまだ決まっていない。

試験的取り出しをめぐっては、11月7日に、事故で溶け落ちた核燃料=燃料デブリの試験的取り出しが完了し、11月12日に事故後初めてデブリが原発構外へ輸送された。
取り出されたデブリの重さは約0.7グラム、放射線量はデブリから20センチの距離で1時間あたり0.2ミリシーベルト。輸送前の測定で、ウランが核分裂したときに生成される「ユーロピウム」が検出された。
11月14日に開かれた福島第一原発事故の分析に係る検討会では、原子力規制庁が「核分裂片としてのユーロピウムというのはなかなか外に出てこなくて検出ができてこなかったもの」「燃料デブリの明らかな一部と考える」とし、東京電力に詳細な分析を求めた。

燃料デブリの試験的取り出しの開始をもって、福島第一原発の廃炉は最終段階の「第3期」に入った。国や東京電力は2051年の廃炉完了を掲げているが、現状で、1号機から3号機までの明確な「廃炉の姿」は示されていない。

【これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送

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