長崎に原爆が投下されたとき、国が定めた「被爆地域」の外にいた「被爆体験者」が被爆者認定を求めた裁判で、原告の半数以上が被爆者と認められなかったことを受け、10日に被爆体験者団体などが県と長崎市に「全員の救済」を要望しました。

「被爆体験者」全員を被爆者と認めてほしいと要望したのは、裁判の原告や被爆体験者団体の代表などです。

被爆体験者 岩永千代子さん(88)
「残りの者はどういう形であろうとも決して見放さないということ」「国のどういう圧力があっても毅然として私たちを守ってもらいたい」

9日の判決で長崎地裁は「被爆地域」の外の東長崎地区で放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと認め、原告の「被爆体験者」44人のうち、裁判の途中で亡くなった2人を含む15人を被爆者と認めました。

一方、29人は被爆者と認められませんでした。

「体験者」の間で新たな分断を生んだこの判決。

明暗を分けたのは「体験者」が原爆投下直後に浴びたと訴えていた「黒い雨」と「灰」でした。

長崎地裁判決は「黒い雨」については放射性物質を含んでいると認めた上で、「黒い雨」が降った東長崎地区で原爆に遭った15人を被爆者と認定しました。

しかし「灰」については「放射性物質であったか否かは定かではない」などと切り捨てました。

原告側の弁護士は「死の灰を健康被害の根拠としないのは極めて不合理かつ非論理的」と判決を批判しています。

岩永千代子さん
「放射性微粒子が雨にはあったけれども灰にはない。そんなめちゃくちゃな判決があっていいのかなと」

支援する被爆者 川野浩一さん
「どうも裁判所は『雨が、雨が』と言っている。科学的な見解でこの問題を洗い直す必要があるのでは」

10日の要望を受け、大石知事と鈴木市長は11日に上京し、「勝訴した原告15人だけでなく、被爆体験者全員を被爆者と認めてほしい」という体験者の声を厚労省の担当者に届ける予定です。

また8月に岸田首相が武見厚労相に「問題の合理的解決」を指示したことについて「早急な対応を申し入れる」としています。

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