記者会見で次期自民党総裁選への不出馬を表明する岸田文雄首相=首相官邸で2024年8月14日午前11時37分、藤井達也撮影

 岸田文雄首相の突然の自民党総裁選への不出馬表明は、事実上の退陣宣言で盆休み中の列島で驚きをもって受けとめられた。JR東京駅付近には、スマートフォンで岸田首相の総裁選不出馬を伝えるニュースに見入る利用客らの姿があった。

 東京都江戸川区のパート清掃員、近藤芳和さん(73)は「裏金問題にしても旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係や対応にしても『責任を取る』と言うだけで、国民の疑問に答えていない。選挙の看板をすげ替えて自民党政権の延命を図るだけなのではないか」とつぶやいた。

 茨城県つくば市の大学4年の女子学生(23)は「新型コロナウイルス禍を乗り切ったことは評価しているけど、新しい資本主義をうたっていた割に経済政策の効果が見えない。さまざまな困難があったとは思うので『お疲れ様でした』と言いたい」とねぎらった。

 東京都江東区の会社員、郡司将太さん(24)は「米議会でウクライナ支援に言及した演説は良かったが、全体的にアピールが下手でもったいなかった。党への不信の責任を取って退く論理は分かるが、自身で最後まで改革を成し遂げてほしかった」と話した。

 岸田政権では、東京電力福島第1原発事故でたまり続ける処理水の海洋放出が始まり、2023年には国のエネルギー政策を転換し、最長60年とされる原発の運転期間延長や次世代原発への新増設解禁にかじが切られた。

 国や東電を相手取った集団訴訟で団長を務める福島県相馬市の中島孝さん(68)は「気候危機への対策が、欧州では再生可能エネルギーへの転換なのに、日本はクリーンでも安価でもない原発への回帰。わずか12年で福島の被害を忘れたかのようだ。首相の首をすげ替えただけでは政策変更は期待できず、気候危機に本気で取り組む政治家に現れてほしい」と話した。【井口慎太郎、深津誠】

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