東京証券取引所=和田大典撮影

 岸田文雄首相が総裁選への不出馬を表明した14日、市場関係者からは「なぜこのタイミングか」と驚く声が上がった。今後の政局や経済政策の見極めにくさなどから東京株式市場は一時株安に転じ、東京外国為替市場の円相場も一時円高・ドル安が進んだ。

 この日午前の東京株式市場は前日のニューヨーク市場の株高の流れを受けて上昇して始まった。しかし、岸田氏の不出馬の意向が報じられると下落方向に転じた。その後は再び買い戻され、終値は前日比209円92銭高の3万6442円43銭だった。

 円相場も一時1ドル=147円台前半から146円台前半まで円高・ドル安が進む場面もあった。午後5時現在は前日比43銭円高・ドル安の1ドル=147円40~42銭。

 大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「8月末に来年度予算の概算要求を控えた大事なタイミングでの不出馬の表明は驚いた」とした。別の市場関係者は「今後出てくる総裁候補によって為替や株価が動くだろうが、現状では判断しがたい」と注視する。

 岸田氏は少額投資非課税制度(NISA)の拡充など「資産運用立国」を掲げてきた。ある金融大手幹部は「新NISAで直接投資が促された実績は大きい」と評価した。実務を担ってきた経済官庁幹部は「投資家からの評価は高い。引き続き必要な政策を進めていく」と冷静に受け止めた。【成澤隼人、竹地広憲】

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