岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬表明を受け記者会見する共産党の小池晃書記局長=国会内で2024年8月14日午後0時35分、田辺佑介撮影

 岸田文雄首相による突然の自民党総裁選への不出馬表明を受け、野党からは「看板の掛け替えだ」などと批判の声が上がった。一方で、新総裁のもとで衆院解散・総選挙が早まるとの見方が強まり、野党側には「ご祝儀」による自民票の上積みに警戒感が高まっている。

 立憲民主党の泉健太代表は14日、記者団に「党が危機になると総理総裁を代えて心機一転、過去を忘れてもらう手法に国民はいつまでも引っかかってはいけない」と強調した。

 首相は記者会見で自民派閥の政治資金パーティー裏金事件への対応として、派閥解消や政治資金規正法改正などを挙げ、「重い判断をした」と語った。しかし、泉氏は「ほとんど実際の改革には至っていない。(岸田氏が)一兵卒になっては、自ら約束したことすら果たされるか一層不透明になったと言わざるを得ない」と疑問を呈した。

立憲代表選、埋没の恐れ

 立憲は来月23日に代表選を控えているが、「ポスト岸田」の座を争う自民党総裁選に注目が集まれば埋没する恐れもある。泉氏は「自民党総裁が誰になろうと、自民に代わる政権を作るという強い志の見えてくる代表選でなければいけない」と表情を引き締めた。

 共産党の小池晃書記局長も14日に記者会見。「国民の怒りに追い詰められた結果だ。自民党の中での政権のたらい回しでは何も変わらない。自民党政治そのものを終わらせなければいけない」と述べ、政権交代の必要性を強調した。「裏金問題、経済無策、外交不在の軍拡、そして改憲、どれもこれも最悪のものばかりだった」と岸田政権を振り返り、「自らの意地、自民党政権をいかに延命させるかしか考えていない」と突き放した。

 社民党の福島瑞穂党首は「(自民党総裁の)看板を掛け替えて選挙をやるということでしかない。裏金問題で責任を取るのであれば、とっくの昔に責任を取るべきではなかったか」と指摘した。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は岸田首相の総裁選不出馬を受けてコメントを発表。「首相が身を引くことで、政治とカネの問題に対し組織の長としてけじめをつけた」と一定の評価をしつつ、「野党もまた変わらなければならない。新しい総裁が選ばれれば解散総選挙は早まるだろう」との見方を示した。

 衆院議員の任期は来年10月だが、立憲幹部は「年内の解散総選挙は確実だ」と話す。支持率が低迷する岸田首相のもとであれば、衆院選は野党側に有利との見方もあったが、この幹部は「(自民党の)顔を替えての総選挙は当然ありうる想定だった」と話す。

 総裁が代わることで刷新感を演出できれば、自民に追い風が吹く可能性がある。別の立憲幹部は「ご祝儀相場があれば誰が総裁になっても(自民の)支持率は上がる」と警戒。総裁選と同じ時期にある立憲代表選についても「報道も総裁選への関心が高くなる。対抗するためには、今のままでいいのかという議論は当然出るだろう」と話し、泉氏と枝野幸男前代表の出馬だけが取り沙汰される構図に懸念を示した。衆院の小選挙区では野党候補が競合し、一本化のめどが立っていない選挙区も多く、共産幹部は「秋には解散があると思って候補者調整を急がなければならない」と話した。【源馬のぞみ、田辺佑介】

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